全身性エリテマトーデス (SLE)は若い女性に好発する病気として知られていますが、子供が発症するとより重症となる可能性があり、注意が必要な疾患です。早めに病気の兆候に気付いて対処できるように、この病気について知っておきましょう。
小児に発症する全身性エリテマトーデスの注意点
小児期発症の全身性エリテマトーデス
全身性エリテマトーデス(以下、SLE)は主に若い女性に好発する病気ですが、15~17%は16歳未満の小児期に発症します。
日本では小児の人口10万人あたり4.7人が罹患し、また成人におけるSLE患者の男女比が1:10~12と圧倒的に女性に多いのに対し、小児では1:5.5と相対的に男児の比率が高いという統計があります。
SLEは自己免疫性で、全身症状を伴う炎症性の疾患です。血管や組織が障害され、多様な臓器障害が起こります。成人に発症するSLEと比べると、小児では症状の経過がはやく、重症化しやすいという特徴があります。
重症化すると、腎不全、中枢神経障害、呼吸不全、血液凝固異常などの臓器障害が現れます。これらの中には致死的で危険な病態も含まれており、早期発見・早期治療の重要性がうかがえます。
SLEの初発症状
SLEの初発症状には以下のようなものが挙げられます。
- 蝶形紅斑
- 発熱
- 全身倦怠感
- 関節症状
- 尿異常
このうち、蝶形紅斑(両側の頬に出来る、赤く蝶が羽を広げたような形をしている皮疹)はSLEに特異的で、初発症状としての頻度も高く、診断上重要な所見です。しかし、典型的な蝶の形となるまでに時間を要する場合があります。
また、その他の症状はSLEに特異的なものではないため、気づかれにくいこともあります。また、しもやけ様の皮疹も頻度が高く、SLEを疑う重要な所見です。
先に述べましたように、小児のSLEは成人のものと比べて経過が進行性で多臓器に障害が及ぶため、早い段階で診断することが大切です。初発症状はもちろんのこと、注意が必要なしもやけが該当した場合、すぐに病院へ行って診断をしてもらいましょう。
注意が必要なしもやけ
さて、先ほど頻度の高い症状のひとつとして、しもやけ様の皮疹を挙げました。全身倦怠感や発熱と同じように、しもやけはSLE非特異的な症状とも言えるのですが、一般的なしもやけと少し違うところもあります。
一般的なしもやけは「凍瘡」とも言い、特に寒い時期に血行が悪くなることで症状があらわれます。手足の指先や耳たぶなどが赤く腫れ、痒みを伴うのが特徴です。この一般的なしもやけと状況の異なるものには注意が必要となります。
たとえば、冬でもないのに出来るしもやけ、時間が経って気温が安定しても治る様子がないしもやけ、発熱や全身倦怠感を伴うしもやけなどが該当します。しもやけは多くの方が経験したことのあるポピュラーな疾患で、見過ごしがちな症状ですが、いつもと違うものには重要な基礎疾患が隠れている場合があるのです。
診断と治療
診断は、蝶形紅斑や光線過敏症といったSLEに特異的な臨床症状に加えて、血液検査、尿検査、抗核抗体検査を行い、それらの結果から総合判断します。診断時には、単なる病名の決定だけでなく、活動性の診断や病態の評価も行います。
特に小児のSLEは、初診時の活動性が高く、病態も複雑であるケースが多いので、治療戦略を練るために病態の把握が重要となります。治療の目標は炎症を抑制して、病態が穏やかな状態を維持することです。これにより、臓器障害が発生したり、また進行したりするのを阻止します。
加えて、治療に用いるステロイド薬や免疫抑制薬の副作用を考慮することも重要です。特に小児ではステロイド薬の過剰投与による成長障害など、小児特有のものもあり、注意が必要です。
小児SLEの10年生存率は98%と、生命予後は大きく改善されました。しかし、病態は継続的に管理する必要があります。早い段階での診断も予後に影響するので、しもやけのようにSLE非特異的な症状でも、おかしいと思ったらすぐに病院で検査をすることが大切です。
まとめ
小児に発症する全身性エリテマトーデスの注意点
小児期発症の全身性エリテマトーデス
SLEの初発症状
注意が必要なしもやけ
診断と治療