小麦は鶏卵、牛乳に次ぐ3大アレルゲンの1つです。乳児期に発症した 小麦アレルギー の3歳時点での耐性は63%になり、学童期ではこの3大アレルゲンの占める割合は6割程度になります。
しかし、小麦は鶏卵、牛乳に比べ特異性があり注意が必要です。
小麦アレルギーの持つ特異性
食物アレルギーとは
食物アレルギーとはある一定の食品を摂取した際に体の免疫機能が過敏に働き、自分自身を傷付けてしまう反応のことを言います。本来、免疫機能は細菌やウイルスなど有害なものから体を守る為に働きます。
しかし食品アレルギーの場合、有害ではない食品に対してもアレルギー反応を引き起こしてしまいます。
この免疫システムを介した食品に対するアレルギーを食物アレルギーと定義しています。間違われやすい病気に食中毒や乳糖不耐症がありますが、これらは免疫とは関係ないため食物アレルギーとは言いません。
また、アレルギーにはタイプがあり、即時型と遅発型があります。小麦アレルギーは即時型に属しますが、即時型は典型的なタイプの食物アレルギーになり、食後2時間以内にじんましんや咳などの症状が発生します。
即時型の中でも複数の臓器の症状があらわれるものをアナフィラキシーと呼び、命を脅かす危険な状態です。それに対して遅発型は食後数時間経ってから症状があらわれます。遅発型の場合主な症状は湿疹などの皮膚症状になります。
子どもの食物アレルギー
子どもの場合、食物アレルギーを引き起こすIgE抗体を作りやすい上、アレルゲンを無害なものにしてくれる分泌型IgAが少ないことや消化能力が未熟なことが原因となり食物アレルギーを引き起こしやすくなります。
しかし、年齢と共にIgE抗体値が低下すること、すなわち一定の食物に対する耐性を獲得することでアレルギー症状を引き起こし難くなっていきます。
特に乳児期に多い鶏卵、牛乳、小麦に対しては、3歳で50~70%、6歳で90%もの耐性を獲得します。小麦に関しては乳児期にアレルギーを発症した場合、早めの耐性獲得が期待できます。
しかし、それ以降の発症は耐性獲得が難しいと言われています。その要因としてはアナフィラキシーショックの既往やアトピー性皮膚炎の合併などがあげられます。
小麦アレルギーの特異性
小麦アレルギーの場合、摂取後の運動で危篤な状態にまで陥ることがあります。喉の腫れや嘔吐、呼吸困難などの症状が起こります。この症状を食物依存症運動誘発性アナフィラキシーと呼びます。まれなケースにはなりますが新しいタイプの食物アレルギーとして注目されています。
運動の強度には関係ないため、食後2時間程は運動を控えることで回避できる症状ではありますが、まだまだ認知度が低く、本人にアレルギーの自覚がない場合は危険です。
運動中に特定の症状があらわれた時や、小麦や魚介類など特定の食物を摂取した後に症状が出た場合、すぐに安静にしましょう。また、医師にその自覚症状を伝えることで臨床的に診断しやすくなります。
この症状に対してはステロイド剤などの薬剤を服用する処置を行います。ただ一生苦しむような病気ではないので、症状が出る一定期間だけ薬剤を服用することになります。
食事制限
子どもの場合は、年齢と共に食物に対する耐性を獲得することから1歳までは完全除去で、1歳を過ぎた辺りから医師の指導のもと、徐々に摂取していくことが望ましいとされています。
また、成長期にある子どもにバランスの取れた栄養を摂取させるために、除去中に栄養素の不足を補えるように代替え食品の摂取が必要になります。小麦の場合、代替え食品として米、米パン、ひえ麺、あわ、ビーフン、片栗粉、くず粉、コーンスターチ、タピオカ粉があげられます。
小麦の場合、加熱によって低アレルゲン化はほとんど起こらないため、完全除去中は混入に気を付ける必要があります。また、しょうゆの原材料にも小麦が含まれていますが、しょうゆの場合、重度の症状を持っていない限りアレルギー症状は起こらないと言われています。
食品アレルギー予防
最近では経皮感作と言って、皮膚から進入したアレルゲンに対してIgE抗体を産生することから食物アレルギーを引き起こすという考え方が主流になってきています。
アトピー性皮膚はもちろんのことバリア機能が未熟な乳幼児にとって経皮感作による食物アレルギーは脅威になります。保湿や湿疹などのケアを含めたスキンケアをしっかり行うことで、食物アレルギーから子どもを守りましょう。
まとめ
小麦アレルギーの持つ特異性
食物アレルギーとは
子どもの食物アレルギー
小麦アレルギーの特異性
食事制限
食品アレルギー予防