はしか とは麻疹のことで、かつては流行を繰り返し、「命定め」と呼ばれるほど致死率の高い病気でした。現在は予防接種等の対策によって発症する人が少なくなった麻疹ですが、それでも年間200~500人が発症しています。そこで、子供が発病したときのために、麻疹の 症状 を詳しく見ていきましょう。
発病したときのために、はしかの症状を知っておく
奈良時代からあった麻疹
麻疹のことが、初めて記録に出てくるのは奈良時代のことです。天平9年(737年)に大流行したことが、当時の官符に記されています。以来、麻疹はたびたび大流行を繰り返し、多くの方が亡くなりました。
そのため「はしかは命定め、疱瘡はみめ定め(器量定め)」と言われた麻疹ですが、2015年3月にWHOは、日本が麻疹の排除状態にあると認定しました。現在、日本で発症する麻疹はすべて海外から持ち込まれたウイルスで、日本土着のウイルスでの感染はないとされたのです。
もはや、日本で発症することはほとんどないと考えられている麻疹ですが、2007年に、小児ではなく10~20代を中心に大流行しました。これは、日常であまりにも麻疹ウイルスに触れることがなくなったため、せっかくワクチン接種でついた抗体の効果が、年を経て弱まってしまったからです。
そこで、ワクチンの2回接種が始まり、麻疹が流行することはなくなりましたが、いまだに年間数百人は海外由来のウイルスで発症しています。ですので、麻疹の症状を知っておくことはとても大切です。
麻疹の症状は大きく4期に分かれる
麻疹の症状の経過は、潜伏期、カタル期、発疹期、回復期と四つの期間に分けられています。
潜伏期は、ウイルスが感染してから発症するまでの期間です。麻疹は、麻疹ウイルスが感染することによって発症します。麻疹ウイルスの感染経路は空気感染、飛沫感染、接触感染で、とても感染力の強いウイルスとされています。
例えば、免疫のない人の集団に1人の発症者が入り込むと、インフルエンザの場合は1~2人が感染する程度ですが、麻疹ウイルスは12~14人が感染すると言われています。
ただし、生後6カ月までは、母体から抗体を受けているので感染することはありません。潜伏期間は10~12日間とされています。
カタル期は風邪と見分けがつかない
潜伏期が終わると麻疹を発症します。麻疹ウイルスに感染した場合、95%以上の人が発症すると言われています。発症は38~39度の発熱とともに、咳や鼻水、目やに、結膜炎といった症状が現れます。この時期をカタル期と呼び、この症状は3日間ほど続きます。
実はカタル期の段階では、麻疹なのか風邪なのかを症状から判断することはできません。ところが、カタル期の終わりごろ(発熱から2日後ぐらい)に、麻疹特有の症状が現れます。
口の奥、奥歯のあたりの頬粘膜に、あわ粒大で灰白色の水疱がたくさんできるのです。コプリック斑と呼ばれるもので、患者の90%以上に認められます。
このコプリック斑が現れると、ほぼ麻疹だと判断できます。また、この時期が最もウイルス排せつ量の多いころで、他人にうつす可能性が一番高い時期です。
麻疹特有の症状が現れる発疹期
コプリック斑が現れると、熱はいったん下がります。そして、再び40度近い高熱が出て、同時に全身に発疹が現れます。つまりコプリック斑が現れると、2~3日後には発疹が出現することが予測できるのです。
麻疹では、発疹が現れる順番も決まっています。まず耳の後ろや首から出始め、顔、胴体、手足へと広がっていきます。この順番は、川崎病と区別するために重要な観察ポイントだとされています。
発疹は紅斑から始まって、やがて3mm程度まで大きくなります。そして、いくつかが集まるように融合して、広がっていきます。発疹が出るころには、口の中にできたコプリック斑は急速に消退していきます。この発疹期は4~5日は続きます。
症状が快方に向かう回復期
2回目の発熱は、3日程度で治まってきます。そして、発疹も褐色の色素沈着を残して消えていきます。色素沈着を気にされる方がいますが、1~2週間で消えてしまうので心配ありません。解熱後、3日を経過すれば、保育園や幼稚園に登園することができます。
麻疹の症状の出始めは、風邪とあまり変わりません。急に発疹が出て驚かないように、コプリック斑があるかどうか、口の中を見るようにしてみてください。
まとめ
発病したときのために、はしかの症状を知っておく
奈良時代からあった麻疹
麻疹の症状は大きく4期に分かれる
カタル期は風邪と見分けがつかない
麻疹特有の症状が現れる発疹期
症状が快方に向かう回復期