急性虫垂炎は、放っておいても自然に治癒することがないため、かならず治療が必要です。そして現在、原則として行われている治療法が「手術」です。急性 虫垂炎 では、どのような 手術 が行われるのか、見ていきましょう。
急性虫垂炎は原則的に手術で治療する
2つの手術法
虫垂とは、大腸のはじまりの部分に、しっぽのようにぶら下がっている管状の器官のことです。免疫機能や腸内細菌のバランスを保つのに重要な役割を果たしています。急性虫垂炎とは、この虫垂に細菌などが感染して炎症を起こす病気です。
急性虫垂炎の治療は、初期の軽い場合を除いて、原則的に手術で虫垂を切除します。手術には、「開腹手術」と「腹腔鏡手術」の二つの方法があります。症状の程度や既往歴などから、ふさわしい方法が選択されます。
昔からある開腹手術
開腹手術は、右下腹部を5~10cmほど切開して虫垂を摘出します。虫垂を切除する手術自体は古くから行われているもので、手法も確立していて難しいものではありません。切開する場所は、虫垂の状態に応じて、脇腹近くを斜めに切開する場合と、おへそに近いところを垂直に切開する場合があります。
麻酔は通常、下半身だけにかかる局所麻酔を行います。腰のあたりの脊椎に麻酔薬を注射する腰椎麻酔や、チューブを入れて持続的に麻酔を行う硬膜外麻酔などがあります。
しかし、どちらの方法も局所麻酔のため、手術中に意識はあります。ですので、子供の場合は、手術に対する恐怖心が妨げになることを防ぐために、全身麻酔を行うのが一般的です。手術にかかる時間は、30~60分程度です。
増えている腹腔鏡手術
腹腔鏡手術は、お腹を切り開かずに、お腹のなかを見るスコープ(腹腔鏡)を使って行う手術のことです。全身麻酔をかけた後、腹部に3~4箇所、5mm~1cmほどの穴を開けます。病院によっては、おへそのところに1箇所だけ穴を開けて行うところもあります。
まず、開けた穴から炭酸ガスを入れて、お腹を膨らませ空間を作ります。そして、スコープ(腹腔鏡)や切除に必要な器具を穴から挿入して、手術を行います。医師は、モニターに映し出されたお腹のなかを見ながら、器具を操作して虫垂の切除を行います。
手術は60~90分と、開腹手術よりも時間がかかります。しかし、手術の傷が小さいため、回復が早いほか、感染症のリスクが小さい、術後の痛みが軽減されるなど、多くのメリットがあります。最近は、開腹手術ではなく腹腔鏡手術を採用する病院が増えています。
入院から退院するまで
急性虫垂炎は、時間が経って症状が進むと、虫垂が癒着したり、腹膜炎といった合併症を発症したりするなど、危険な状態になってしまいます。
そのため、急性虫垂炎と診断された場合、進行度にもよりますが、なるべく早いうちに虫垂を切除する必要があります。ですので、診察を受けた当日に入院し、その日のうちに手術が行われることがほとんです。
手術を行う際には、まず腹部超音波検査やCT検査を行って、画像で虫垂の腫れ具合を確認します。それから麻酔をかけて、手術を行います。
手術前後は絶食になるため、何も食べることはできません。食事は手術後の状態を見ながら、徐々に摂れるようになります。入院期間は、開腹手術の場合は7~10日間程度になります。腹腔鏡手術の場合は、5日間程度で退院することができます。
虫垂を切除してから完全に回復するまでには、4~6週間かかります。その間は、無理な運動や暴飲暴食は避けた方がよいでしょう。
軽度の場合は手術しないことも
虫垂の炎症が軽度の場合は、手術を行わず、抗生物質を投与して治療することがあります。いわゆる「薬でちらす」治療です。
手術のような身体や精神への負担はありませんが、20%ぐらいは再発する可能性があると言われています。また、抗生物質を投与しても症状の改善が認められない場合は、手術して虫垂を切除することになります。
急性虫垂炎で一番怖いのは、悪化して虫垂が破れてしまう(穿孔)ことです。その場合、細菌などがお腹の中にばらまかれ、腹膜炎などの合併症が生じて、生命に危険が生じることがあります。特に乳幼児は、穿孔例が多いとされています。
急性虫垂炎が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診するように心がけてください。
まとめ
急性虫垂炎は原則的に手術で治療する
2つの手術法
昔からある開腹手術
増えている腹腔鏡手術
入院から退院するまで
軽度の場合は手術しないことも