虫垂炎 は、大腸の一部である虫垂突起に細菌感染がおこり炎症を起こす病気で、盲腸炎(もうちょうえん)とも呼ばれています。診断が難しいため、気づいた時には虫垂が破れている例が多く、注意が必要です。
子供に多い急性虫垂炎ってどんな病気?
虫垂ってなに?
虫垂は、盲腸から出ている細長い器官で、大腸の一部です。リンパ組織を有するため、免疫に関与している可能性が高いと考えられていますが、切除をしても人体の生命維持には問題ありません。
虫垂炎とは
虫垂炎は、袋状になった虫垂の内腔が詰まり、その中で細菌が増殖して炎症を起こすことが原因です。詰まる原因としては、便やリンパ組織の集まりであるリンパ濾胞の増生した組織によるものがあります。
炎症が進行すると、虫垂が壊死(えし)して破裂し、感染によって生じた膿がお腹の中にまき散らされて、腹膜炎を引き起こします。
2~3歳ころから見られるようになり、10歳~20歳代に最も多い病気です。2歳以下はまれと言われています。
虫垂炎の症状とは
虫垂炎がおこると、ほぼ全例で腹痛を伴います。虫垂が詰まって虫垂内腔の圧が高くなると、まずみぞおちやおへその周囲に痛みが生じます。その後、徐々に虫垂がある右下腹部に痛みが移動することが特徴です。しかし、子供の場合、痛みが腹部全体に広がっていることがあります。
嘔吐や食欲不振もよくみられる症状です。痛みが始まると同時に、嘔吐・下痢の症状を伴うことが多く、食べたがらなくなります。また、炎症のために、37~38度台の発熱を認めます。
子供がよくなる感染性胃腸炎との鑑別が重要ですが、虫垂炎では、腹痛の後に、嘔吐・下痢、発熱を認め、ウイルス性胃腸炎の場合、たいてい嘔吐からはじまり、その後に痛みと下痢が起こります。
診断の難しさ
子供の虫垂炎は非常に診断が難しい病気の一つであり、気づいた時には、虫垂が破れて穿孔(せんこう)を起こしていることが多いのが特徴です。4歳未満の約7割が虫垂炎と診断を受けた時にはすでに穿孔していたとの報告もあります。
診断が困難な理由はさまざまですが、まず、同じ症状を起こす病気が多いことが挙げられます。子供では腸のぜん動運動がまだ発達していないため便秘になりやすく、便秘により腹痛を生じることがあります。
また、感染性胃腸炎、腸重積、メッケル憩室(けいしつ)、クローン病も同様の症状を認めます。
さらに、虫垂が右下腹部に無いといった非典型的なケースもあることから、典型的な症状・診察所見を認めないことも多々あります。また、年少児ではどこが痛いのかをうまく伝えられず、お腹の痛みよりも嘔吐や下痢の症状が強く出ることがあるのも原因の一つです。
お母さんにもできる虫垂炎の診断のポイント
常に子供と一緒にいるお母さんがしっかり子供の症状を見ておくことは、虫垂炎の診断や重症化を防ぐ一助となります。そして、子供がお腹の痛みと吐き気を訴えた時に、常に虫垂炎念頭に置いておくことが大切です。
腹痛のため、歩行が困難となり前かがみの姿勢になります。また、ベッドに横になると、横向きで足を曲げています。乳幼児では、不機嫌になり、右足を曲げる動作を認めることがあります。
2~3時間たっても痛みが良くならず、さらに増悪する場合は必ずもう一度医療機関を受診しましょう。
検査とは
虫垂炎を疑ったら、通常血液検査やレントゲン検査・腹部エコー検査を行います。
白血球数が高い場合は、細菌による炎症が起こっている可能性が多く、重症度の指針にもなります。しかし、子供の虫垂炎は、白血球数の上昇を認めない例もあり注意が必要です。
エコー検査は信頼性が高く、痛みを伴わない優れた検査です。膿瘍や腹水がたまっていないかなどもエコーで調べることができます。
治療とは
子供の虫垂の壁は薄く、診断が困難なことから穿孔が高頻度にみられます。虫垂炎を疑う場合は、慎重に経過をみるため、入院を勧められることがあります。
点滴による補液と抗生剤治療が基本ですが、穿孔をしているケースでは緊急手術が必要となります。また、再発を繰り返すケースでは、炎症が落ち着いてから手術で虫垂を摘出することがあります。
まとめ
子供に多い急性虫垂炎ってどんな病気?
虫垂ってなに?
虫垂炎とは
虫垂炎の症状とは
診断の難しさ
お母さんにもできる虫垂炎の診断のポイント
検査とは
治療とは