自分の子どもが脳腫瘍と診断されれば、誰でも不安を感じます。脳腫瘍にはいくつもの種類があり、発症して数日で命を落とすとても危険なものから、何十年も何もおこらないものまであります。
今回は脳腫瘍の中で、もっとも多い 髄膜腫 について説明します。
子どもが髄膜腫と診断されたら
髄膜腫とは
髄膜腫は、脳を覆っているくも膜で発生し、脳の表面にできる腫瘍です。脳腫瘍の中で最も多く、脳腫瘍全体の26%程が髄膜腫です。
90%異常は良性の腫瘍で、他の場所への転移がなく、良性の経過をたどることがほとんどです。成人の2%ほどに発症しているといわれており、女性に多いのが特徴です。
子どもにおける発症率は、5歳未満で0.1%、5~15歳で0.5%、15~29歳で2.3%と少ないことがわかっています。成人のように男女の発症率に差はみられません。
神経線維症2型やゴーリン症候群への合併症として、また、頭部への放射線治療の後に発症がみられることがあります。
髄膜腫の症状
小さい髄膜腫は無症状です。そのため、頭をぶつけたためにMRI検査を受けて、偶然に発見される例も多くあります。
腫瘍の中で、発見後に大きくなるものは4割以下で、そこから症状があらわれるのは2割以下であるといわれています。ごく稀に、小さくなっていくものもあります。
腫瘍が大きくなってくると、脳や神経を圧迫するため、症状があらわれます。症状は、髄膜腫のある場所や髄膜腫の大きさによって異なります。
主な症状として、頭痛、嘔吐、ふらつき、運動麻痺、けいれん、てんかん発作、視覚障害、嗅覚障害、平衡障害、聴力障害、顔面の痛みやしびれ、めまい、ふらつき、ものが飲みこみにくいなどがあげられます。
診断と検査
CTや造影剤を用いたMRIよって診断ができます。腫瘍ができている部位をくわしくみることで、摘出する際に他の部位を傷つけないように手術をすることが可能になります。
また、画像から腫瘍に栄養を与えている血管を予測し、手術時にその血管をふさぐ処置をほどこします。
子どもの髄膜腫は悪性である可能性が高いため、多くの場合、頭蓋骨に小さな穴をあけて腫瘍の一部を取りだし、病理組織検査を行います。
髄膜腫の治療
手術で腫瘍を摘出することが、基本的な治療法です。症状がないまま発見された場合は、手術をせずに経過を観察する場合もあります。腫瘍が大きくなる傾向があれば、手術による摘出を考えます。
全摘出ができれば再発の可能性は低くなりますが、摘出によって周囲の血管や神経を損傷する可能性があって意図的に腫瘍を残す場合や深い場所にあって手術で取りきれない場合もあるため、全摘出ができる可能性は75%程度だと報告されています。
そのため、手術後も経過を観察するための通院治療が必要になります。また、手術ができない場合や、手術で取りきれなかった腫瘍があるときに、放射線治療を行う場合もあります。
放射線治療は腫瘍の成長をおさえる効果がありますが、すべての患者さんに効果があらわれるわけではありません。放射線治療には、障害もあり、腫瘍と周辺部位との癒着が強くなることや脳浮腫をおこすことがあります。
予後について
手術中に大出血をおこすこともあり、手術時に死亡してしまう確率は3%と報告されています。また、手術後40%の患者さんに神経症状の悪化がみられるといわれています。
また、脳出血がおこることもあり、再手術をおこなう場合があります。手術で取り除いた硬膜や頭蓋骨のかわりに人工硬膜や人工骨を用いると細菌感染をおこすことがあります。
手術後は通院を続け経過をみていく必要があります。症状に応じて治療を追加したり、リハビリテーションをおこなったりします。
まとめ
子どもが髄膜腫と診断されたら
髄膜腫とは
髄膜腫の症状
診断と検査
髄膜腫の治療
予後について