髄膜炎は、時に子供の命を奪うこともある恐ろしい病気です。ですので、子供が発熱したとき、もしかすると髄膜炎なのではないかと心配される方も多いと思います。もし 髄膜炎 だった場合、よく現れる 症状 があります。髄膜炎特有の症状である、髄膜刺激症状について見ていきましょう。
髄膜炎特有の症状である髄膜刺激症状
なぜ髄膜刺激症状が現れるのか
人間の脳と脊髄は、それぞれ頭蓋骨と脊柱によって守られていますが、その骨の中でさらに髄膜という膜によって包まれ保護されています。
髄膜は大きく3層に分かれていて、外側から硬膜、クモ膜、軟膜といいます。髄膜炎とは、髄膜のうち、クモ膜と軟膜、そしてその隙間であるクモ膜下腔に炎症が起きる病気です。
炎症が起きると、その部分の髄膜が刺激され、髄膜刺激症状を引き起こします。代表的な髄膜刺激症状は、頭痛や吐き気、嘔吐であり、これらは患者本人も自覚できる症状です。
一方、炎症によって刺激を受けている髄膜に負荷が加わると、本人の意志とは関係なく痛みに対する防御反応が現れます。この防御反応も髄膜刺激症状とされています。
そして、防御反応が現れるかどうかを観察して、髄膜が炎症を起こしているかどうかを確認するのが、髄膜刺激症状スクリーニング検査です。
患者本人が行えるスクリーニング検査
髄膜刺激症状のスクリーニング検査には、患者本人が行うものと、別の人に行ってもらうものと2種類があります。本人ができる検査としては、ネックフレクション・テストとジョルトアクセンチュエイションがあります。
ネックフレクション・テストは、椅子などに真っすぐ座わり、頭だけを前に倒していくものです。もし髄膜刺激症状が現れていると、首を曲げようとすると痛みがあって、曲げることができず、下あごが胸に届きません。
ジョルトアクセンチュエイションは、同じように椅子などに座って、頭を水平に振る検査です。髄膜刺激症状があれば、頭を振ると頭痛がひどくなります。
他者が行うスクリーニング検査
幼児など年齢が低い場合は、患者本人がスクリーニング検査をするのは難しいと考えられます。そこで、別の人が検査を行い、髄膜刺激症状があるかを見ます。
もっとも分かりやすい検査は、項部硬直があるかどうかを調べることです。患者に仰向けに寝てもらった状態で、頭だけを手で持ち上げて起こしていきます。
通常であれば首が曲がって顎が胸につきますが、髄膜刺激症状が出ている場合は、首を曲げようとすると抵抗を感じ、簡単に曲げることができなくなります。
ケルニッヒ徴候も、特徴的な髄膜刺激症状の一つです。患者を仰向けに寝かせたまま、片足を真っすぐ伸ばした状態で持ち上げていくと、途中で膝が自然に曲がってしまうのです。このとき、膝を真っすぐに伸ばそうとしても抵抗感があって、伸ばすことはできません。
さらに、ブルジンスキー徴候と呼ばれるものもあります。項部硬直を見るときと同じように仰向けに寝かせた状態で、頭を持ち上げていくと、何もしていないのに足が勝手に曲がってしまいます。
髄膜炎では必ず見られる髄膜刺激症状
髄膜炎は、その原因によって、いくつかの種類に分類されています。ウイルスが感染することによって発症する無菌性髄膜炎、細菌感染が原因の細菌性髄膜炎、結核から二次的に発症する結核性髄膜炎。
こうした髄膜炎は、それぞれ少しずつ症状の現れ方が異なりますが、いずれの場合も髄膜刺激症状が見られます。ただし、症状の程度が軽かったり、徐々に出現したりする場合もありますので、髄膜刺激症状が見られないからといって安心してはいけません。
子供が熱を出したら観察することが大切
子供はよく熱を出します。その原因が髄膜炎であることは、本当にまれだといえます。
しかし、発熱の他に、「激しい頭痛がある」、「足を引きずって歩いている(髄膜炎の場合、歩行や起立が難しくなります)」、「項部硬直がある」、「繰り返し嘔吐する(繰り返しがポイントです)」といった症状が同時に見られる場合は、髄膜炎である可能性が高くなります。
子供が熱を出したら、様子をよく観察し、少しでもおかしなところがあれば、直ちに診察を受けるようにしてください。
まとめ
髄膜炎特有の症状である髄膜刺激症状
なぜ髄膜刺激症状が現れるのか
患者本人が行えるスクリーニング検査
他者が行うスクリーニング検査
髄膜炎では必ず見られる髄膜刺激症状
子供が熱を出したら観察することが大切