Hibワクチンの予防接種というものを聞いたことがあると思います。これは 子供 の 髄膜炎 を予防し重度な後遺症を残さないようにする為に行う予防接種です。保険適用になったのはつい最近の事で、数年前までは自費で1回2万円前後の費用が掛かり、それを2回から3回接種する必要がありました。
子供の熱の原因で一番怖いのは細菌です。細菌性の熱は重症化しやすく子供の場合、早い段階で悪化する事もまれではありません。髄膜炎後遺症による障害は大きな課題を残します。今回は生後8か月の髄膜炎後遺症の子供の例を元に課題と対応を提示します。
子供の髄膜炎後遺症の課題と対応
8か月で髄膜炎発症!どのような後遺症が出る?
生後8か月で髄膜炎を発症した子供は、つかまり立ちができて、言葉も「マンマ」等喃語を話せるまでに正常発達していました。
しかし、髄膜炎の炎症が治まった後、後遺症として残ったものは、体を思い通りに動かせないといった不随意運動そして、言葉の理解の困難さ言語表出の困難さがある言語発達障害が残りました。
わかりやすく例えると、生まれたての赤ちゃんの状態のまま伸長だけが伸び、動作や中身が年齢相応に成長していないといった状態です。
髄膜炎は脳を取り囲む膜の炎症ですので、広範囲にわたって脳にダメージを与えてしまいます。その為、重度の知的・身体障害を負ってしまう事が多いのです。
ご飯が食べられない!!
8か月まで正常発達でしたので、離乳食を食べていました。しかし、体の運動機能を調節する部分の脳に障害があった為、舌の動きが自由にならず、食べ物を口に入れても意識せず舌で口の外へ押し出してしまうといった事になっていました。
通常は舌で食事の塊を喉の方へ送り込みますが、それが反射的な動きに支配されてできないのです。これを専門的には嚥下障害の中でも送り込み障害といいます。この場合いかにして安全に口から栄養補給を行うかが大きな課題となります。
寝返りができない!!
人間には生まれつき原子反射というものがありとりあえず生きるに必要な動作がプログラムされています。そして、次第にそれらは発達段階に合わせ、より高等な動きへと置き換えられ反射的な動作は消えていきます。
しかし、髄膜炎後遺症のように脳の広範囲にわたって損傷が見られた場合その原子反射が統合されないまま残ってしまうのです。その中で非対称性緊張性頸反射というものがあります。
これは、顔が向いた方の手足が伸び反対側の手足が曲がるといった反射です。これがある為に、寝返ろうとする方向の手足が伸びてしまい、寝返りを邪魔してしまいます。
子供は動作を色々とやってみて成功した体験をもとに学習し発達していきますが、その経験ができない為、動作の発達が著しく遅れてしまいます。まずはこの原子反射を統合し寝返るなどの基本的な動きができるようになることが課題となります。
言葉が話せない!!
8か月は一言、二言と言葉が出てくる、楽しみな時期でもありますが、一切言葉が出なくなりました。聴力の障害も疑われますが8か月ではもともとはっきりと答えは出せません。音のする方を振り向こうとする目の動きもありますので、聞こえてはいるようでした。
ただ、ンーンーっとうなるような声は聴かれます。つまり、発声器官には問題はないのです。この状況は言葉を理解しそれを言葉として表出する脳の言語野という部分が障害されていると予想されます。
この場合、言葉の習得ももちろんですが、まずは自分の意思表示をどのようにして外へ知らせる事が出来るのか、といったコミュニケーションの基礎部分の獲得が課題となります。
髄膜炎後遺症の対応
基本的にはリハビリテーションの専門家の意見を参考に、その子供一人一人の状態に合わせてリハビリテーションを進める事が好ましいです。具体的には作業療法士や言語聴覚士といった職種に相談すると、日常生活動作の指導や言語発達支援、摂食の問題解決策や訓練方法等を指導してくれます。
家庭と専門家が連携して子供のリハビリテーションに取り組める環境ができる事が理想です。ただ、家庭では体は大きくなるのに中身が0歳児のままといった状態を受け入れる事に難しさを感じるでしょう。そのギャップに苛立ちを覚えたり不安を覚えたりするものです。
髄膜炎後遺症の子供を持つ親はまず、ありのままの子供の状況を受け入れる事から始めなければなりません。とてもつらい覚悟ではありますが、早く受け入れて療育体制が取れる事が子供の将来にとって重要になります。
成長は止まってしまったわけではありません。振出しに戻っただけです。その子供、子どものスピードがありますが、ちゃんと前に進んで行きます。
まとめ
子供の髄膜炎後遺症の課題と対応
8か月で髄膜炎発症!どのような後遺症が出る?
ご飯が食べられない!!
寝返りができない!!
言葉が話せない!!
髄膜炎後遺症の対応