貧血と聞くと、大人の女性に多い、鉄欠乏性貧血を思い浮かべる方が多いと思います。しかし、 溶血性貧血 は子どもにもおこる貧血で、鉄欠乏性貧血とは原因も治療法も異なります。
今回は、溶血性貧血について紹介します。
溶血性貧血とはどのような病気か
溶血性貧血とは
血液成分の中の赤血球は、酸素を運ぶ働きをしています。赤血球の中のヘモグロビンが不足するなどして血液中の酸素が不足してしまうことがあります。この状態が貧血とよばれるものです。ヘモグロビンが不足しておこる貧血が一般的に知られている鉄欠乏性貧血です。
溶血性貧血はこれとは異なり、赤血球が破壊されることによっておこります。赤血球の寿命は通常120日程度あります。寿命が少し短くなっても、骨髄で赤血球を作る能力が上回っている場合は貧血にはなりません。
赤血球の破壊が進み、寿命が15日~20日以下になってしまうと、貧血の状態になります。これが溶血性貧血です。溶血性貧血には、先天性のものと後天性のものがあります。
先天性のものは赤血球そのものの以上によりおこります。後天性のものは、赤血球を破壊する抗体や血管壁の異常が原因となりおこります。
溶血性貧血の症状
通常の貧血症状である、動悸、息切れ、疲労感などがあります。それに加えて、溶血性貧血では黄疸の症状があらわれるのが特徴です。これは、赤血球が壊れることにより赤血球に含まれるヘモグロビンの処理数が増え、その結果、ビルビリンという黄色の色素をした成分がつくられるためです。
そのため、新生児黄疸から溶血性貧血の診断がされることがあります。ビルビリンが尿中に排泄されて、尿の色が濃くなり、時には、赤色やコーラのような赤茶色の尿が出ることもあります。ビルビリンは胆嚢にたまり、胆石症の原因ともなります。
遺伝性球状赤血球症
先天性の溶血性貧血の中での半数以上がこの遺伝性球状赤血球症です。赤血球膜の蛋白に異常があるため、赤血球の中央のくぼみがなく、球状になってしまいます。基本的に、常染色体優性遺伝で遺伝します。
赤血球が壊れる症状と、血液をつくる状態の進み具合を検査で確かめます。症状が軽ければ治療の必要はありません。治療は、交換輸血や紫外線を照射する光線療法を行います。
また、この病気では、脾臓を摘出すると貧血が改善することがあります。その場合の手術は子どもが学齢期まで成長してから行われることが一般的です。
自己免疫性溶血性貧血
後天性の溶血性貧血の代表的なものです。自分自身の赤血球に結びつく自己抗体(蛋白)ができることによって、赤血球が通常よりも早く破壊されておこります。温式と冷式とよばれるものがあり、温式は体温に近い37度前後で抗体の結合が強く、冷式は4度前後で結合が強くなります。
また、血管の中で赤血球を壊すものと、脾臓の中で赤血球を破壊するものがあります。発症する年齢は、子どもから高齢者まで幅広く、小児期に発症が増加する時期が一時期あり、その後は10~30歳の女性と50歳以降に増加します。
70歳代にも増加する時期がありますが、発症に性差はみられません。この病気の約半数は原因が特定できません。
全身性エリテマトーデスや悪性リンパ腫、マイコプラズマ肺炎の患者さんがこの病気を発症することがあります。治療は、副腎皮質ステロイドホルモンの投薬や輸血、脾臓の摘出などを行います。自然治癒する例もまれにあるそうです。
日常生活における注意
溶血性貧血は、症状が軽いと自覚症状がない場合があります。そのため、家族が子どもの様子をみて黄疸や疲れやすさといった症状から発症に気づく場合が多くあります。
副腎皮質ステロイドホルモンを服用している場合は、自己判断で薬の量を減らしたり、中止したりすることは危険なため、医師の指示に従ってしっかりと飲むことが大切です。
ストレスによって悪化するといわれているため、ストレスを避けた落ち着いた生活を送るように心がけます。また、感染症にも注意する必要があります。手洗いやうがいをしっかりして感染予防につとめます。
ビタミンEが不足すると赤血球が壊れやすくなり、溶血性貧血をおこすということもいわれています。意識的にビタミンEをとれるような食事を工夫したり、サプリメントで補ったりすることが予防につながります。
まとめ
溶血性貧血の原因や症状について
溶血性貧血とは
溶血性貧血の症状
遺伝性球状赤血球症
自己免疫性溶血性貧血
日常生活における注意