鉄欠乏性貧血 といって、思い浮かぶのはなんですか?ふらふらするとか、めまいがするといった症状でしょうか。しかし、ただの貧血と軽い気持ちで考えていると、病気が隠れていることもあります。
子供でも陥ってしまう可能性がある鉄欠乏性貧血の事をもっとよく知っておきましょう。
鉄欠乏性貧血の原因と症状とは
血液の働き
血液は、赤血球、白血球、リンパ球、血小板、血漿という成分でできています。それぞれ働きは違います。
- 赤血球は酸素の運搬をおこないます。
- 白血球は体内の異物を処理して、体を守ってくれます。
- リンパ球は白血球の一種で、免疫機能の中心的役割を果たします。
- 血小板は血液の凝固や止血の働きをします。
- 血漿は、全身をめぐって栄養、水、ホルモンを運び、体温調節や止血にも働きます。
このように、血液は生きていくうえで必要不可欠なものです。
この血液のなかで、成分の9割以上を占めているのが赤血球です。酸素を運搬する赤血球の中にヘモグロビンという成分がありますが、そのヘモグロビンのヘムという物質が酸素と結び付いて、酸素を全身に運んでくれます。
ヘムを合成するには鉄分が必要で、胃の中に入った鉄分は、胃酸により吸収されやすい形に変わり、十二指腸や小腸で吸収されます。
人の体の中には約4gの鉄分が含まれていて、3分の2がヘモグロビン鉄、残りは体に貯蔵されている鉄分です。この鉄分の需要と供給のバランスが崩れる事によって、鉄欠乏性貧血が生じます。
鉄欠乏性貧血の原因
では、なぜ鉄分の需要と供給のバランスが崩れるのでしょうか。まず食事での鉄分の摂取不足です。つぎに、子供が成長期になり、鉄分が多く必要なときです。また、妊娠したときに不足することもあります。もうひとつは、出血性の疾患や月経過多で鉄分を多く喪失したときです。
とくに、子供の場合、好き嫌いなどで、鉄分の摂取量が不足すると、成長期も重なり、容易に鉄分不足に陥ってしまいます。乳幼児では1歳ごろまで、母乳栄養をおこなっていた児に多くみられます。
このような理由で、鉄分が不足すると、まず肝臓、脾臓、骨髄などに含まれる貯蔵鉄が使われます。それでも足りない場合に、血液の中にある鉄分が使われます。
そして、鉄分不足の状態が続くことで、ヘモグロビンがうまく作られず、赤血球1つあたりのヘモグロビン量が減少し、赤血球の大きさが小さくなり鉄欠乏性貧血になります。貧血の9割以上がこの鉄欠乏性貧血といわれています
鉄欠乏性貧血の症状
鉄欠乏性貧血の状態が続くと、疲労感や倦怠感、動悸、息切れ、胸の痛み、顔面蒼白などの症状があらわれます。さらにすすむと、爪がスプーン状になったり、口角炎、舌炎、嚥下障害がみられることがあります。また、氷、泥、ちり、釘などを食べる異食症を示すこともあります。
しかし、貧血状態はゆっくりとすすむことが多いので、体が順応して、症状がなかなかあらわれないことがあります。検診でみつかることもありますが、特に子供は自分で症状を訴えることがむずかしいので、気が付いたことがあれば早めに医師に相談すると良いでしょう。
鉄欠乏性貧血の検査
鉄欠乏性貧血の検査は血液検査です。赤血球の数、ヘモグロビンの量、赤血球の大きさ、血中の鉄の量、血中のフェリチンの量(貯蔵鉄)を検査します。これらが低値と認められたら鉄欠乏性貧血と診断されます。
これらの検査からはっきりとした原因がわからない場合はさらに検査が必要です。便の潜血検査や内視鏡検査が必要になることもあります。
鉄欠乏性貧血の治療方法
まず、鉄分が欠乏している原因の病気がある場合はその治療をします。そして同時に鉄分の補給をおこないます。好き嫌いが原因で鉄分不足になっているときは、普段から鉄分の多い食事を取るように工夫します。市販の商品で鉄分が多く入っている商品を利用するのも良いでしょう。
しかし、食事療法で改善が難しい場合、また、貧血がひどい場合は、経口の鉄剤を服用します。子供用にはシロップもあります。便の色が黒くなることがありますが、心配ありません。
経口の鉄剤は副作用として吐き気がすることがありますが、吐き気が強くて飲むのが無理な場合は、投与期間を注意しながら、注射で治療する方法が用いられます。
治療は血液中の鉄分が増え、ヘモグロビンが上昇し、しばらくして貯蔵鉄が正常になるまで治療します。貯蔵鉄が正常になるまでには3~4カ月かかります。
鉄欠乏性貧血は生活習慣も関係してきます、家族で生活習慣と食生活を見直すと、鉄欠乏性貧血を防ぐことが出来るかもしれません。
まとめ
鉄欠乏性貧血の原因と症状とは
血液の働き
鉄欠乏性貧血の原因
鉄欠乏性貧血の症状
鉄欠乏性貧血の検査
鉄欠乏性貧血の治療方法