てんかんは、脳神経疾患のなかで最も頻度が高い病気で、1,000人に5~10人の割合で発症するといわれています。発症のピークは乳児期と思春期で、大半は20歳までに発症しています。
てんかん の治療は、基本的に薬物療法です。どのような 薬 が用いられるのか、見ていくことにしましょう。
てんかんの治療に使われる薬とは
てんかんの発作には大きく2種類ある
てんかんとは慢性の脳疾患で、大脳皮質神経細胞が過剰に興奮することによって起こる発作症状を繰り返す病気です。てんかんの発作には、異常脳波が脳の一部に現れる「部分発作」と、大脳半球全体に現れる「全般発作」の2種類があります。
「部分発作」では、身体の一部がけいれんを起こす、あるいは勝手に動くといった症状が現れます。「全般発作」の場合は、突然の意識消失や全身のこわばりといった全身症状が現れます。どちらの発作を起こすかによって、治療に使われる薬剤が異なります。
てんかん治療で使用される薬剤
てんかんの治療には、抗てんかん薬が使用されます。そして、発作の種類によって第1選択薬が異なります。部分発作の場合の第1選択薬は、カルバマゼピンです。全般発作の場合は、バルプロ酸が第1選択となります。どちらの薬剤も古くから使用されている、歴史のある薬です。
実際の治療では、まず、これらの第1選択薬が単独で投与されます。投与は、有効とされる最小限度の量からスタートします。服用中は、薬の血中濃度を測定して、投与量を調整します。
第1選択薬を最大耐容量まで投与しても症状が改善されない場合は、第2選択薬に切り替えられます。それでも効果が無いときは、単独ではなく多剤療法を行うこともあります。
副作用に対する注意が求められる
抗てんかん薬は、病気の性質上、長期にわたって投与されることになります。そのため、副作用が現れないように、投与量などのコントロールが重要になります。
抗てんかん薬は脳神経細胞の興奮を抑える薬のため、副作用として「眠気」や「ふらつき」といったものが報告されています。
また、「薬疹」もよく見られる副作用の一つです。薬疹とは、薬物に対するアレルギーや中毒の反応で、服用後数分ないし数時間で皮膚に発疹が生じるものです。
また、注意すべき副作用として「スティーヴンス・ジョンソン症候群」、「血小板減少症」、「再生不良性貧血」、「重症肝炎」などが挙げられています。
スティーヴンス・ジョンソン症候群とは、高熱や全身倦怠感といった症状をともなって、全身に紅斑やびらん、水疱が発生する病気です。予後はあまり良くなく、多臓器不全や敗血症を合併することがあります。厚生労働省の指定難病に選定されています。
薬物治療の効果は
薬物治療によって、てんかん全般の約70%は、発作を完全に抑えることができるといわれています。
しかも、薬物を使用して2~3年間発作が認められず、検査でも異常脳波が見られない場合は、3~6カ月かけて薬の量を少しずつ減らしていき、最終的に投与量をゼロ(断薬)にすることができます。
このように効果の高い薬物治療ですが、薬物を投与している間は注意すべきことや制限されることがいくつかあります。
光によって発作を誘発される子供の場合は、偏光眼鏡をかけるようにしなければなりません。また、睡眠不足や疲労、過度の緊張、発熱といった発作を誘発する要因は避けるようにする必要があります。
さらに、水泳や木登り、自転車は禁止になります。おぼれたり、転落したり、交通事故にあったりすることを防ぐためです。ただし、それ以外のスポーツは制限しないのが一般的です。
妊娠している場合は特別の配慮が必要
妊娠初期に抗てんかん薬を服用しますと、胎児に先天奇形を生じる可能性が高まるといわれています。しかし一方で、抗てんかん薬を服用しなければ、てんかん発作によって早産や死産につながる危険性も高くなります。
そのため、妊婦への投与は、薬剤の選択と投与量のコントロールがとても重要になり、特別の配慮が必要だとされています。
てんかんの患者は抗てんかん薬と長期間にわたって、付き合っていくことになります。本人はもちろん、保護者や周囲の人もまた、薬物治療に対する理解を深めることが何よりも大切になります。
まとめ
てんかんの治療に使われる薬とは
てんかんの発作には大きく2種類ある
てんかん治療で使用される薬剤
副作用に対する注意が求められる
薬物治療の効果は
妊娠している場合は特別の配慮が必要