てんかんは、発作を繰り返す脳の病気で、多くの種類があります。種類によって発症時期もさまざまなのですが、なかには赤ちゃん(乳児)のときに発症するものもあります。 赤ちゃん が発症する てんかん には、どのようなものがあるのか見ていきましょう。
赤ちゃんが発症するてんかん
てんかんとはどんな病気か
てんかんは、痙攣などの発作を繰り返し起こす慢性疾患です。発作を1回だけしか起こさない場合や、脳波に異常はあっても症状が見られない場合などは、てんかんとは診断されません。
てんかんの発作は、大脳皮質神経細胞が過剰興奮することで起こります。過剰に興奮した細胞が異常脳波を起こし、それに伴っててんかん発作が現れるのです。
てんかんは、異常脳波が大脳の一部に出現する「局在関連性てんかん」と、大脳全体に出現する「全般てんかん」の大きく2つに分類されます。
そして、それぞれ「特発性」と「症候性」に分けられます。
赤ちゃんに見られる特発性全般てんかんの数々
特発性てんかんは原因ははっきりしませんが、年齢に関連して発病します。なかには、乳児のころに発病するてんかんがいくつかあります。
まず、生後3日前後に発作が始まるのが「良性家族性新生児痙攣」です。遺伝性のてんかんで、生後6週間以内には発作が治まるといわれています。
次に、生後5日前後に痙攣などの発作を起こすのが「良性新生児痙攣」です。はっきりとした原因がわからないもので、この時期だけに症状が現れるのが特徴です。
生後半年~2歳で発症するのが、「乳児良性ミオクロニーてんかん」です。このてんかんは、家族にてんかんを持っている人がいると発症しやすく、ミオクロニー発作を何度も繰り返します。
ミオクロニー発作とは、顔面や手足といった身体の一部、もしくは全身が、びくっと瞬間的な筋収縮を起こすものです。光の刺激によって起きることが多いとされています。乳児良性ミオクロニーてんかんは、薬によってコントロールしやすい病気で、予後も良好です。
赤ちゃんのてんかんの代表格であるWest症候群
症候性の全般てんかんの一つに、West症候群(点頭てんかん)があります。4~7カ月の乳児によく見られます。頭をがくんとさせるような(こっくりするような)前屈や、手足を左右同時にびくんと振り上げる動作などを、数秒間隔で繰り返します。また、精神運動発達遅滞もきたします。
はっきりした原因はわかっていません。ただ、West症候群を発症した乳児に、脳奇形、ビタミンB6欠乏症などの先天代謝異常、結節性硬化症といった神経皮膚症候群が確認されています。
West症候群の治療は、下垂体から分泌されるACTH(副腎皮質刺激ホルモン)や抗てんかん薬、ビタミンB6の投与といった薬物療法が中心になります。
予後は早期治療などによって改善されていますが、知的障害が残ることが多く、良くはありません。
West症候群と双璧をなす乳児重症ミオクロニーてんかん
乳児重症ミオクロニーてんかんは、生後4~6カ月に発症する難治性のてんかんで、発症時期や難治性で、West症候群と双璧をなすものです。
発熱や入浴をきっかけとして、全身痙攣または半身痙攣を起こします。痙攣の持続時間は比較的長いものです。2カ月に1回ぐらいの頻度で起こります。
発熱をきっかけにすることから、熱性けいれんと誤診されることがあります。しかし、乳児重症ミオクロニーてんかんの痙攣は、次第に熱がなくても起こすようになります。
薬物治療を行いますが、痙攣のコントロールは難しいのが実情です。次第に知的障害や失調症などが現れ、予後は不良です。
赤ちゃんが発症するてんかんは、さまざまです。やがて、自然に治まるものもあれば、難治で予後不良なものもあります。治療は長期間にわたり、親を通して行われますので、医師や子供と信頼関係を築いていく必要があります。
まとめ
赤ちゃんが発症するてんかん
てんかんとはどんな病気か
赤ちゃんに見られる特発性全般てんかんの数々
赤ちゃんのてんかんの代表格であるWest症候群
West症候群と双璧をなす乳児重症ミオクロニーてんかん