男の子の陰嚢の中に精巣がないことがあります。その場合は、停留精巣の可能性があります。精巣に異常があると、将来きちんと機能するのか心配になる親御さんが多いと思います。
子どもが 停留精巣 と診断された場合の対応や治療についてくわしくお伝えします。
男の子の病気、停留精巣とは
停留精巣とは
赤ちゃんの精巣は、胎児期におなかの中で作られます。それが、胎生3か月頃から下へおり始めて、胎生30週から32週頃までに陰嚢の中におさまります。しかし、これが途中でとまってしまうことがあります。この状態を停留精巣といいます。
男の子の生殖器の異常の中では一番多く、予定通りに生まれた赤ちゃんの3%にみられます。早産や低体重で生まれた赤ちゃんでは、もっと多くなります。生まれた時に停留精巣でも、生後6か月までに精巣がおりてくることがあるため、1歳になると1%に減少します。それ以降は変わりません。
停留精巣では、陰嚢を触っても精巣に触れません。同じように、精巣に触れない病気に移動性精巣や精巣無形性があります。病院で触診やMRI検査、腹腔鏡による確認をおこなうことによって、どの病気か診断されます。
停留精巣の原因
胎児の体の中で精巣ができあがってくると、男性ホルモンが作られるようになり、その時期に精巣が陰嚢へ向かっており始めます。そのため、停留精巣の原因には、男性ホルモンが関わっていると考えられていますが、はっきりとした原因はわかっていません。
しかし、家族に停留精巣の人がいる場合や、母親が妊娠中に飲酒や喫煙をしていた場合に発生率が高くなるといわれています。
停留精巣に関係する病気
停留精巣が誘発する病気があります。停留精巣の治療をおこなうことで、これらの病気になる危険をへらすことができます。
不妊症
精子は体温より2~3℃低い環境でうまく作られます。停留精巣になると、精巣が体内にとどまることで精巣が体温と同じ温度となり精子が作られにくくなります。このため、不妊症になる確率があがります。
精巣がん
精子がうまく作られないことが、精巣がんの発生を、引き起こすといわれています。アメリカのデータでは、停留精巣の人が精巣がんになる確率は、一般の男性に比べて10倍ほど高いと報告されています。
子どものころに、停留精巣の治療をすることで、がんの発生率が低くなるかは、まだはっきりわかっていません。しかし、陰嚢の中に精巣があると、自分で触れることができるため、がんを早期に発見できる可能性が高くなります。
精巣がんは、早期発見での治癒率が高い病気なので、この点からも、停留精巣の治療を受けておくことは大切であるといえます。
鼠径ヘルニア
停留精巣は多くの場合、鼠径ヘルニアを合併しています。鼠径ヘルニアは進行すると腹痛などの症状が出てきます。通常、停留精巣の治療と同時に鼠径ヘルニアの治療もおこないます。
精巣捻転
精巣が陰嚢にとどまっていないため、精巣の血管がねじれてしまい、精巣捻転がおこりやすくなります。この病気になると、精巣に血液がいかなくなり、壊死してしまうため、緊急に手術による治療を受ける必要があります。
停留精巣の治療方法
先述した通り、1歳未満の赤ちゃんは、多くの場合、自然に精巣が降りてくるため、経過を観察します。治療を行う場合は、手術が最も安全で治癒率が高いため推奨されています。
腹部を2~3cmほど切って、そこから精巣についている血管や精管をはがす処置をおこないます。その後、陰嚢を1cmほど切って、精巣を陰嚢に糸で固定する処置をおこないます。通常1時間程度で処置は終わります。症状によっては、腹腔鏡手術でおこなうこともあります。
手術は生後15か月までにおこなうことがよいとされています。
停留精巣の疑いがある場合
子どもの場合、精巣についている筋肉が過敏に反応して、精巣が陰嚢の中にないこともあります。そのため、停留精巣かどうかを判断するためには、間をおいて何回か観察をする必要があります。
入浴中など、緊張がほぐれているときには精巣がおりてくることが多いので、そのような場面で何度か触れてみるようにします。その場合にも精巣に触れることができない場合は、医療機関を受診します。
まとめ
男の子の病気、停留精巣とは
停留精巣とは
停留精巣の原因
停留精巣に関係する病気
停留精巣の治療方法
停留精巣の疑いがある場合