「子どもの水頭症 どのような特徴があるの?(前編)」では、水頭症は髄液の循環・吸収が何らかの問題でうまく行われず、脳室内に溜まっている髄液の量が増えていってしまい、脳内の圧力がどんどん高まっていく病態とご紹介しました。
後編では、 水頭症 の治療法や重度の場合の作業療法についてご紹介します。
子どもの水頭症 どのような特徴があるの?(後編)
水頭症の治療
水頭症の治療は外科的手術が必要になります。一般的にはシャント術と言って脳内に溜まった髄液をパイプで他の場所へ流す事を目的に行います。具体的にはVPシャントといい脳室から腹腔へ流し、余分な髄液をお腹から再吸収させる方法です。
ただし、この方法は感染症を引き起こすこともありまた、いつ詰まってしまうかわからないという事がある為、万全とは言えません。水頭症自体は悪性の病気ではないのですが、シャントを入れなければ問題が出るし、シャントを入れても他の問題に今度は頭を悩ませなければならないのです。
もし、シャントに問題が起こった時は再手術を行う事になります。しかし、ここ5年ほどで新たな手術方法が用いられるようになりました。内視鏡の発達により実現可能になった手術で、内視鏡的第3脳室底開窓術といいます。
なんと、内視鏡で脳内をのぞきながら脳室の底に穴をあけていき、脳の表面に髄液が流れるようにしてしまう手術なのです。この方法であれば合併症の心配もなく、パイプのつまりにも頭を悩ませる事がなくなるのです。
脳に穴を開けるという事に心配になると思いますが、脳は全てが完全に機能しているわけではありませんので、安全な経路をたどって穴を開ければ問題ないいのです。ただ、この方法も実は万全ではありません。
この方法が使えるのは髄液の経路が詰まって起こる水頭症のみが対応になります。髄液吸収に問題がある水頭症の場合は適応されず、シャント術に頼るしかありません。しかし、水頭症は早期に発見でき手術を行えば生きていくに問題はないものになります。
女性であれば出産時などにシャントつまりのリスクが伴う危険性が高まりますが、言い換えれば出産も可能なのです。
重度の水頭症の子供と作業療法という思想
水頭症の多くは手術により脳機能を取り戻すことができますが、中にはそれが叶わず、重度の後遺症を患う事があります。重度の知的障害を伴い運動機能を失う子供もいるのです。ほぼ植物状態となり、視力も失います。
人工呼吸器の発達により延命は可能になりましたが、ただそこにいるという事にすぎません。しかし、そのような子供でも会話をすることができます。もちろん言葉による会話ではありませんが、意思を感じる事が出来るのです。
血圧の変化や脈拍の変化、汗の量、体温。その子が今、嬉しいのか悲しいのか、つらいのか等、その微妙な変化で読み取って会話します。
リハビリテーションの中でも作業療法はその人がその人らしく生きる事を手助けする職業です。植物状態であっても人は人なのです。人はコミュニケーション抜きでは幸せは感じられません。
このようにして関わりを持ち、周囲に会話の方法を伝えたり、今こんな気持ちに違いないと伝えたりする事も大切なリハビリテーションの一つなのです。リハビリテーションの語源は人権を再び取り戻すといった事です。作業療法士はその思想を高く持っています。
しかし、専門職だからと言って特別な事ではありません。誰にでも持てる思想です。もし、水頭症が重度で子供が植物状態になったとしても会話はできると思って欲しいものです。
まとめ
子どもの水頭症 どのような特徴があるの?(後編)
水頭症の治療
重度の水頭症の子供と作業療法という思想