滲出性中耳炎 とは、中耳の奥にある中耳腔に液体が溜まる病気のことです。滲出性中耳炎の治療は、耳管通気・鼓膜切開等によって耳管の炎症を抑えることで機能を改善し、中耳に溜まった液体を排出します。滲出性中耳炎では、目立った症状が現れにくいですが、悪化すると手術が必要になったり、子供の発育に大きな影響が出たりする場合もありますので、早期発見・治療が必要です。
滲出性中耳炎による悪影響と治療法
滲出性中耳炎の症状
滲出性中耳炎は、中耳の奥にある中耳腔に、中耳腔の粘膜から染み出て来た浸出液と呼ばれる液体が溜まる病気です。
鼻の奥と耳をつなぐ耳管が機能していると、浸出液は耳管を通って鼻から抜けていきますが、鼻の病気による耳管機能の低下や耳管の開口部の周囲の炎症によって耳管から浸出液が抜けにくくなり、滲出性中耳炎にかかりやすくなります。
滲出性中耳炎の症状としては、以下のような症状が現れます。
- 耳が聞こえにくい(難聴)
- 耳の中に水が溜まっている感覚がある
- 耳が詰まった感じがする(耳閉感)
- 自分の声が響く感じがする
- 耳鳴り
滲出性中耳炎は、急性中耳炎のような激しい耳痛などの自覚症状が出にくいため、発見が遅れがちですが、治療せず放置しておくと慢性中耳炎になり、鼓膜に穴が空いたままになる、中耳に細菌が入りやすくなって耳だれや難聴が続くといった症状を引き起こします。
また、滲出性中耳炎は真珠腫性中耳炎に移行する事もあります。鼓膜の一部が中耳に陥没して袋ができ、その部分に垢がたまると真珠腫ができます。真珠腫は周りの骨や組織を破壊しながら大きくなっていき、顔面神経麻痺や髄膜炎等を併発して命に関わる事もあります。
滲出性中耳炎が悪化すると手術が必要になりますので、中耳炎と軽く考えず、早期発見して耳鼻科で適切な治療を受けなければなりません。
滲出性中耳炎による発育への影響
滲出性中耳炎は、急性中耳炎のように、激しい耳の痛みや発熱といった自覚症状が出ないので、子供自身で耳に異変があると判断して大人に話すのは難しいものです。
ですが、自覚症状がないからといって滲出性中耳炎を発見できずに日常生活を送っていると、耳の聞こえが悪いために耳からの情報が入りにくくなり、子供の発育に以下のような様々な影響が生じます。
- 言葉の発達が遅く、言葉数も少ない
- 機嫌が悪くなりよく怒ったり泣いたりする
- 呼びかけても返事をしない、ぼんやりしている
- 言われた事を度々聞き返す
- 落ち着きがなく授業を集中して受けられない
では、どのようなきっかけで子供が滲出性中耳炎にかかっているのに気づくのでしょうか。
耳に関して特に子供からの訴えがなくても、テレビに近づいたり音量を上げたり、呼んでも反応が鈍いといった行動を見て親が気づく場合もありますし、風邪を引いた時に耳鼻科に行って検査をした結果、また、就学前検診で聴力に異常があると診断されて発見される場合もあります。
特に、中耳炎で治療を受けた事がある、風邪を引きやすい、鼻にアレルギー性鼻炎等の病気があるといった場合は、気づかないうちに滲出性中耳炎にかかっている可能性がありますので、日々の生活の中での子供の様子に常に気を配りましょう。
滲出性中耳炎を早期発見できれば、幼稚園・保育園・学校での集団生活への悪影響を最小限に食い止められます。
滲出性中耳炎の治療
滲出性中耳炎の治療では、耳管の機能を改善し、中耳に溜まった液体を排出します。
滲出性中耳炎の原因として、耳管の炎症が挙げられます。耳管に炎症があると、耳管の機能が低下して中耳の圧力が上手く調整できなくなり、鼓膜が耳の奥の方に引っ張られます。
耳管通気は、鼻の穴から金属製の細い管等を入れたり、ゴム球を使ったりして耳管に直接空気を送り込む治療法で、中耳の圧力を正常に戻し、溜まった液体の排出を促します。
耳管通気で効果が見られない場合は、鼓膜切開をした後、中耳に溜まった液体を吸い出します。
しかし、鼓膜切開をしても、穴がすぐに閉じて再び中耳に液体が溜まれば、鼓膜切開を繰り返さなければならず、患者さんに大きな負担となるので、鼓膜切開をして小さなチューブを差込み、外耳と内耳との間に通路を作って空気を通したり、液体を抜いたりする鼓膜チューブ留置術を行う事もあります。
滲出性中耳炎は「副鼻腔炎」、「アデノイド増殖症」、「アレルギー性鼻炎」等、他の鼻の病気が原因で起こる場合もあり、その場合はそれらの病気も並行して治療します。
アデノイドとは、のどの奥にあるリンパ組織です。増殖して大きくなったり炎症を起こしたりすると、耳管を塞いで働きを悪くしてしまいますので、アデノイドを切除する手術を行う事もあります。
滲出性中耳炎の治療は、すぐに治療の効果が現れず、長期にわたって通院が必要になる場合も多いですが、医師の指示に従い、完治したと言われるまできっちり治療を続けましょう。
まとめ
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