嘔吐は新生児期に非常によくみられるものです。大部分が一過性で自然に治まるものだと言われていますが、中には嘔吐の原因となっている病気が潜んでいる可能性がある場合があります。生理的嘔吐と病的嘔吐の違いはどこにあるのでしょうか。
新生児 嘔吐 についてご紹介いたします。
生理的嘔吐と病的嘔吐の見極めが肝心な新生児の嘔吐
新生児の生理的嘔吐
新生児の胃の容量はおおよそ50mlと小さい上に形状も円柱に近く、食道と胃の境目の幽門部の機能が未熟なこともあって、ちょっとした体の動きによって嘔吐しやすい状態にあると言えます。
哺乳の際に空気を飲み込む量が多いとゲップとともに嘔吐したり、母乳やミルクを飲み過ぎたために嘔吐することもあります。
ゲップとともに嘔吐することを吐逆(とぎゃく)、母乳やミルクの飲み過ぎや哺乳直後の体動で腹筋の収縮を伴わずに食道や胃の内容物を口角からだらだらと出すことを溢乳(いつにゅう)と呼びます。
溢乳の場合には幽門括約筋の機能不全や食道の病気が原因であることもありますが、ほとんどの吐逆や溢乳は哺乳のし方を変えることで対応することができ、これが原因で体重が増加しないということはありません。
また、新生児には初期嘔吐といって出生直後から2日程度で自然に治る新生児初期嘔吐と呼ばれる症状があります。1日に2~3回くらい、羊水様・粘液または血液を混入したコーヒー残渣様の少量の吐物を嘔吐し、嘔吐以外の症状はないのが新生児初期嘔吐の特徴です。
新生児初期嘔吐は生理的な現象だと考えられてきましたが、哺乳障害に繋げないためには出生直後の体温管理が大切であることがわかってきました。出生後の体温下降が著しいほど、嘔吐などの哺乳障害が多くなるようです。
生理的嘔吐の量はシーツや衣類上の数センチ平方以内で、通常20ml以下であると言われています。吐物が凝固乳汁で1日5~6回の嘔吐であれば、生理的嘔吐と考えられるでしょう。
体を動かしたときに嘔吐することが多く、哺乳が順調に行われていて、体重増加も順調であれば、ほぼ心配する必要がないと考えられます。
新生児の病的嘔吐
体重の増加がみられない場合や脱水状態になるほどの嘔吐を繰り返す場合、胆汁や血液が吐物に混じっているような場合には緊急に小児科を受診する必要があります。
上述したように、嘔吐の原因になっている何らかの病気が潜んでいる可能性があるのです。そのような場合の嘔吐には、吐き気を伴い、噴水状嘔吐や泡沫状嘔吐などがみられることがあります。
新生児の病的嘔吐の原因として考えられるのは、消化管の器質的・機能的な異常や中枢神経系の異常、感染症、代謝異常症、ミルクアレルギーなどです。
消化管の器質的・機能的な異常には消化管の閉鎖や狭窄、ヒルシュスプルング病、壊死性腸炎、腸回転異常症、胃食道逆流症などの場合があります。
中枢神経系の異常には脳浮腫、水頭症、頭蓋内出血などの場合があります。代謝異常には先天的代謝異常や低血糖、副腎性器症候群などの場合があります。
また、嘔吐に下痢を伴う場合には細菌やウイルスの感染症や過敏性腸症候群の可能性もあります。アセトン血性嘔吐症といって脂肪が代謝されるときに作られるアセトンが体内に蓄積されて嘔吐する場合もあります。
新生児は咳の発作で嘔吐するようなこともあり、稀ではありますが、頭部を打撲した際にも嘔吐することがあります。
病的嘔吐は授乳前から何回も嘔吐する、体重が増加しない・減少する、脱水をみとめる、排便をしない、腹部膨満を伴う、胆汁様嘔吐、発熱など他の症状を伴う合併症がみられることが特徴です。
また、新生児期には脱水症になると黄疸がひどくなるようなこともありますので、注意が必要です。
新生児嘔吐の注意点
新生児の病的嘔吐嘔吐で特に心配なのは泡のように吐く泡沫状嘔吐、噴水のように勢いよく吐く噴水状嘔吐、吐物に緑色のものが混じる胆汁性嘔吐、固まった状態のミルクを吐く無胆汁性嘔吐だと言われています。
嘔吐が生理的なものか病的なものかの見極めのポイントとして、吐物に血が混じっていないか、体重増加は順調か、脱水の傾向はないか、発熱・黄疸・腹部膨満などはないか、便秘・下痢はないか、頻繁に吐いていないかなどの点が重視されます。
まとめ
生理的嘔吐と病的嘔吐の見極めが肝心な新生児の嘔吐
新生児の生理的嘔吐
新生児の病的嘔吐
新生児嘔吐の注意点