急性中耳炎の後になってしまった滲出性中耳炎が長引き、慢性化してしまうと、真珠腫性中耳炎に移行してしまうことがあります。
真珠腫性中耳炎 は、耳だれや難聴などを引き起こし、時に髄膜炎や脳膿瘍など、命にかかわることもある重大な病気です。
中耳炎を繰り返す人は気を付けたい、真珠腫性中耳炎
真珠腫性中耳炎とは
真珠腫性中耳炎(しんじゅしゅせいちゅうじえん)は、通常はぴんと張った状態の鼓膜が、一部分だけ奥に入り込んでしまう病気です。正常な場合、耳垢などは自浄作用により外側へと排出されます。
しかし、鼓膜の一部に陥没がみられると、その内側に耳垢などの角化物が溜まってしまいます。そこで、細菌や真菌が繁殖し、炎症が起こります。炎症は、周囲の骨を破壊しながら進んでいくとされています。
滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)などが長引き、中耳の換気が悪くなることで真珠腫性中耳炎は発症しやすくなります。
子供の場合、母親のお腹にいる時に、皮膚になるべき組織が中耳に入り込んでしまい、発生する先天性真珠腫性中耳炎というものもあります。
真珠腫性中耳炎の症状
ごく初期の段階では、ほとんど無症状ですが、ある程度まで炎症が進むと生活に支障をきたすような症状を呈するようになります。匂いのある耳だれや難聴、耳鳴り、めまいなどが一般的な症状です。鼓膜が奥まで入りこんで、顔面神経の近くまでいってしまうと、顔面神経麻痺などを引き起こすこともあります。
中耳には、日常生活を営む上で非常に大切な働きをする器官が非常にたくさん集まっているのです。治療をせずに放置してしまうと、髄膜炎や脳膿瘍を引き起こし、生命を脅かすこともあります。
子供は、難聴を言葉で訴えることが少ないため、なかなか発見できないことがあります。耳だれなどがある場合は、できるだけ早めに専門の耳鼻咽喉科を受診することが大切です。
細かな観察が必要な検査
まずは鼓膜をよく観察して、どの程度の真珠腫性中耳炎になっているのか確認します。
頭部X線や、側頭骨ターゲットCTなどを行って、真珠腫の場所、骨の破壊の程度と場所などを確認します。また、聴力検査を行って、伝音難聴、混合難聴などの程度を確認します。
真珠腫性中耳炎の治療
他の中耳炎と違って、真珠腫性中耳炎は手術が必要となる中耳炎です。真珠腫性中耳炎は、進行していく病気のため、放置すると確実に悪化してしまいます。
真珠腫を完全に摘出した後、破壊されてしまった耳小骨を再形成するための手術を行います。
真珠腫は、ほんの少しでも残ってしまうと、再発する可能性が高くなるので、完全に除去することが大切となります。一度の手術で完全に除去することが難しい場合は、何度かの手術に分けて除去を行うこともあります。
二度目の手術で耳小骨連鎖をよくして、難聴を改善していくこともあります。
また、子供の場合は再発が多いことから、半年~1年後に再発の有無を調べるための点検手術が行われることもあります。
手術後に起きる可能性のある合併症
手術で切除する真珠腫の周りには、たくさんの神経が通っています。手術の際に、これらの神経を傷つけてしまうと合併症が起きてしまうことがあります。
真珠腫性中耳炎の手術の際によく起こる合併症のひとつが、味覚障害です。鼓膜の裏側には味覚をつかさどる神経があります。真珠腫の場所によっては、この神経を切除しなければならないこともあります。
術後、2~3か月の間は味覚を感じにくい状態になりますが、徐々に他の味覚神経がうまく機能するようになり、だんだんと味覚は回復していきます。
顔面神経も耳小骨のそばを通っているため、真珠腫が近くにできてしまうことがあります。真珠腫を除去した際に、顔面神経に傷がつくと、顔面神経麻痺が起きてしまうこともあります。
まとめ
中耳炎を繰り返す人は気を付けたい、真珠腫性中耳炎
真珠腫性中耳炎とは
真珠腫性中耳炎の症状
細かな観察が必要な検査
真珠腫性中耳炎の治療
手術後に起きる可能性のある合併症