はじめての出産で赤ちゃんに黄疸があらわれると驚いてしまいますが、新生児の 生理的黄疸 はよく見られる現象です。多くの赤ちゃんにあらわれるものだと理解した上で、病的な黄疸との区別をつけられるよう、しっかりとチェックしていきましょう。
新生児に特有の症状としてあらわれる生理的黄疸
生理的黄疸とは
黄疸とは血液の中に含まれる「ビリルビン」の値が上昇することによって、皮膚表面や眼球結膜(白目の部分)が黄色く見える状態のことを指し示します。新生児によくみられる症状のひとつで、そのほとんどはお母さんの胎内から外へ出るための適応過程として考えられている生理現象です。
最近の研究では、生理的黄疸は「ビリルビン」の抗酸化作用で、新生児を活性酸素の毒から守る働きがあると考えられるようになっています。
生理的黄疸が見られる期間
新生児の生理的黄疸は、約9割の新生児にあらわれると言われています。生後2日~3日ほどで皮膚や白目の部分が黄色く見えるようになり、1~2週間ほどかけて少しずつ黄色みが消えていきます。新生児の生理的黄疸は生後2~3週間ほどで自然に治っていきます。
しかし、黄疸がみられた子供の約2割には治療の必要があると考えられています。黄疸の状態がなかなか消えていかない時は、なんらかの病気や障害が隠れていることも考えられます。医師の診察を受けて、適切な治療を受けるようにしましょう。
生理的黄疸の原因
新生児の皮膚や粘膜が黄色く見える原因は「ビリルビン」という物質が体内で増加するためです。「ビリルビン」は黄色の色素を持っていて、血液中にビリルビンが増えすぎると肌や粘膜まで黄色く見えてしまいます。
「ビリルビン」は血液の中で赤血球が分解された際に発生する物質です。普通、「ビリルビン」は肝臓で処理されてしまうので過剰な状態になってしまうことはありません。
ですが、新生児の血液中には赤血球が非常に多く含まれていて、産まれると同時にたくさんの赤血球が分解され、「ビリルビン」が一時的に過剰な状態にまで増加します。
通常ですと、肝臓で上手に処理されますが、新生児は肝臓の働きが未熟で、十分に機能していないため、たくさんの「ビリルビン」を一度に処理することができず、生理的黄疸という現象を引き起こします。
母乳性黄疸
新生児の生理的黄疸が長引いてしまう原因のひとつに母乳性黄疸があります。母乳には肝臓の働きを弱くする女性ホルモンがたくさん含まれており、母乳を飲んでいる新生児は肝臓の働きが弱くなってしまいます。
このため、血液の中の「ビリルビン」の処理が遅くなって、黄疸が長引くことがあります。完全母乳の赤ちゃんの場合、3週間~1カ月ほど長引いてしまうこともあります。
黄疸の程度などがひどい場合は、ミルクを足していくと黄疸が引いていきますが、担当の主治医の先生とよく相談して指示に従うようにしましょう。病院では赤ちゃんの足の裏などから少量の血液を採取して「ビリルビン」値を計測しています。
黄疸の治療について
基本的に新生児の生理的黄疸では治療は必要ありません。通常の生理的黄疸では、血液の中の「ビリルビン」の値が13mg/dlくらいになった後、正常値の5mg/dl以下まで徐々に下がっていきます。ですが、血液の中の「ビリルビン」の値が15mg/dlを超える時は病気の可能性もあります。
「ビリルビン」が過剰にできてしまう「溶血性黄疸」や胆汁の処理がうまくできない「先天性胆道閉鎖症」、肝臓の「ビリルビン」処理が上手にできないために起こる「新生児肝炎症候群」などは病的な黄疸であると言えます。
血液の中の「ビリルビン」が異常に多い状態になっていると脳神経細胞が損傷し、「核黄疸」という重い病気を発症することがあります。核黄疸になると脳性まひの障害などが残ることも考えられます。
黄疸の程度が強かったり、なかなか黄疸が引かなかったりする時は病的な黄疸である可能性も考え、担当の小児科医に相談するようにしましょう。「ビリルビン」の値を下げる治療を行います。光を重点的に当てて治療を行う光治療や体内の血液を取り換えてしまう交換輸血などが行われます。
まとめ
新生児に特有の症状としてあらわれる生理的黄疸
生理的黄疸とは
生理的黄疸が見られる期間
生理的黄疸の原因
母乳性黄疸
黄疸の治療について