乳幼児が患う胃腸炎として一番多いのがロタウイルスによるものです。5歳以下の乳幼児の約95%が1度は経験するほど胃腸炎の中でも感染頻度が高い ロタウイルス には重症化しやすい危険性があります。激しい下痢に白濁した 便 の症状がある場合はその可能性が高いと言えます。
ロタウイルスに罹ると便の色が白濁するのは何故?
ロタウイルスとは?
ロタウイルスは乳幼児下痢症と呼ばれており、5歳以下の子どもに多くみられる感染症の胃腸炎になります。以前は冬場に流行していましたが、最近では2月~春先に移行してきています。嘔吐を伴う下痢が主な症状で、30~50%に発熱の症状がみられ、腹痛を伴うこともあります。
また、お米のとぎ汁のように白濁した便が特徴にあげられますが、これには理由があり、通常、人の便は胆のうから分泌される担汁により色付けされますが、頻回の下痢により分泌が間に合わないことから白濁した水溶性の便が出ると言われています。
ただ、このような状態の便はノロウイルスに感染している場合にも起こりうるので注意が必要です。また、血便が出た場合は腸重積を合併している可能性が高くなります。
それに加え、ロタウイルスに感染している乳幼児の便は酸っぱい匂いが強烈なことから、この匂いで判別されることもあるようです。
そして、ロタウイルスには多くの種類(型)があります。そのため、1度罹ったとしてもその型に対する免疫しか作られないことから、また別の型に罹る可能性が高い胃腸炎です。しかしながら、2回以上罹ると重症化するリスクは低くなると言われています。
重症化しやすいロタウイルス
ロタウイルスは初感染が6ヶ月~2歳の場合、症状が重症化しやすいと言われています。入院するまでに重症化した胃腸炎のうち、ロタウイルスによるものの割合は全体の36~52%も占めています。
アメリカにおいては1年間に数百万もの乳幼児がロタウイルスに感染しており、その中でも約7万人もの乳幼児が入院治療法を受け、内100人以上もの乳幼児が死にいたっています。
日本ではそれ程多くの実例はないものの、年間80万人にも昇る感染者の内、15人に1人の割合で感染者が入院治療を受けるまでに重症化しているとの報告があります。
重症化する上で一番怖いのが脱水症状や脳炎・脳症です。代謝性アドシーシスを伴うような重度の脱水症状が生じると、腎前性腎不全や高尿酸血症、尿酸結石、腎後性腎不全などの合併症を引き起こす危険性があります。
それに加え、中枢神経疾患と関連性のある症例やウイルスが全身に感染した症例も報告されています。
また、発症後2~4日後に意識障害や痙攣が起こると脳炎・脳症を引き起こす可能性が高くなります。脳炎・脳症は重度の後遺症が残る可能性が高いと言われており、突然死など死亡する危険性もあります。
ロタウイルスの予防
ロタウイルスの感染経路としては、糞口感染で直接、ないし間接的に感染し、その上、感染者の半数近くに気道症状がみられることから、飛沫感染も起こり得ます。
有効な予防策はなく、感染拡大を防ぐために罹患児の隔離や糞便の適切な処理、手洗いなど衛生面の徹底、汚染物を次亜塩素酸で消毒するなどの対策が必要です。
また、ロタウイルスには有効とされる抗ウイルス剤がないため、対処療法での治療になります。重症化しやすいロタウイルスから子どもを守るために大切なのが予防接種です。
乳幼児対象の予防接種にはロタリックスとロタテックの2種類のワクチンがあり、現在日本では任意で行っております。しかしながら、日本ではこのワクチンを導入してから日が浅いのと任意で費用がかかるため接種率が低い現状があります。
予防接種の注意点
初感染時の重症化を防ぐ目的で開発されたこのロタウイルスワクチンは、再感染を完全に予防できるというものではありません。ただ、自然感染した場合でも、2回目以降は下痢症状が軽減することから、ワクチンを接種していれば重症化は予防できるというわけです。
また、腸重積を過去患ったことがある、ないしは、起こしそうな先天異常が認められる乳幼児は接種することができません。
最近の調査では、初期接種後、腸重積発症リスクが高くなることが分かっています。一般的に腸重積の好発年齢が乳幼児後期にあることから、初接種は生後14週と6日までに行うことが大切です。
仮にワクチン接種後、腹痛や周期的な愚図り、反復性のある嘔吐、血便、腹部膨満などの症状がみられた場合は、副作用として腸重積を罹患した可能性があるので、速やかに医師の診察を受けましょう。
まとめ
ロタウイルスに罹ると便の色が白濁するのは何故?
ロタウイルスとは?
重症化しやすいロタウイルス
ロタウイルスの予防
予防接種の注意点