皮膚には外部刺激から肌を守るための防御機能が備わっていますが、免疫や皮膚構造が未熟な乳幼児の肌はその機能の弱さから おむつかぶれ を起こしやすい傾向にあります。
ワセリン は防御システムを損なうことなく、肌本来の機能を保護する効果があると言われています。
おむつかぶれにワセリンを使用することの有効性
ワセリンとは?
ワセリンとは石油を原料とした鉱物油になります。ワセリンにはヴァセリン(アメリカ版白色ワセリン)、白色ワセリン、プロペト、サンホワイトと4つの種類がありますが、これらはその純度により呼び名を変えているだけです。純度は白色ワセリン、プロペト、サンホワイトの順に高くなります。
今ほど高い精製技術がなかった大正~昭和に置いては不純物が混和していることにより皮膚トラブルを起こす人が多かったですが、現在では高い技術による安全性の高さから保湿剤としてや医療機関で処方される軟膏の基材としても頻繁に使用されています。
また、一般的に、ワセリンには薬理作用はないことから、副作用は起こらないと言われています。
ワセリンが効くおむつかぶれとは?
本来、ワセリンには皮膚表面をコーティングすることで水分が蒸発すること防ぐ効果があります。また、おむつかぶれとはおむつで覆われた部分が汗や尿、便によりふやけている状態におむつによる摩擦や尿、便による刺激が加わることで起こった炎症のことを指します。
防御機能の未熟な乳幼児の肌はこれらの刺激や摩擦に弱く、おむつかぶれは頻繁に起こりやすい上に再発しやすい特徴があります。そこで大切なのが予防です。
皮膚を保護する効果のあるワセリンで摩擦などの刺激から守ることはとても有効です。また、軽度のおむつかぶれであれば、患部を清潔にし、ワセリンで保護するケアでも効果が期待できます。
しかし、炎症の程度や原因によってはワセリンでは効果が得られないこともあります。
湿潤療法
以前から行われている皮膚疾患に対する治療法と言えば、傷口を消毒し、乾燥させる方法です。しかし、この方法だと元気な細胞までもが破壊され、再生する力が抑制されることで、傷の治りが遅くなってしまうことが懸念されます。
そこで、現在は傷口を乾燥させるのではなく、湿った環境に置くことで肌本来の治癒力を最大限にまで高める治療法へと移行しつつあります。これを湿潤療法と呼びます。
湿潤療法は傷口から出る滲出液(リンパ液)が湿った環境下では活発に働き、傷口を塞く工程がスムーズに行われる性質を利用しており、軽度の傷やかぶれ、火傷などの治療に適応されます。湿潤療法には痛みを伴わない、治療が簡単、傷口が早く治るといったメリットがあります。
治療方法は傷口を水道水で洗い流し、ワセリンをたっぷりと覆うように塗り、創傷被覆材(ラップ・ガーゼ)で保護するだけです。
通常、医療機関でおむつかぶれに対して処方される薬はワセリン、ステロイド、亜鉛華軟膏になりますが、亜鉛華軟膏に至っては全く逆の治療法になり、傷口を乾燥させることで治療します。
汗や尿により蒸れやすい環境にあるおむつかぶれには適した治療法とは思えますが、敏感な乳幼児の肌には確固たる治療法は存在しません。専門医の指示に従って治療を行うことが第一ではありますが、なかなか改善されない場合は湿潤療法を試してみる価値はありそうです。
さまざまな見解
皮膚科医の中には、ワセリンをはじめとする保湿剤が皮膚疾患を長期化させるという考え方を持っている人がいます。
皮膚疾患を治す過程では乾燥させる必要がある時期があり、保湿剤の常用がその大切な時期を妨げることで、皮膚の自然治癒力を阻害するだけでなく、肌の機能に悪影響を与えるというのです。
ワセリンに関しては、肌を油膜で保護することにより汗と皮脂により形成される天然の保湿剤のバランスが崩れる、純度が高いとは言え、微量でも含まれている不純物によりアルルギー反応を起こす可能性がある、また、日焼けやシミの原因になり得る、角質細胞の角化を促進するなどさまざまな弊害があるとの見解を示しています。
皮膚科や小児科など幅広い分野で調剤用の基材としてや保湿剤として使用されているワセリンは、高い精製技術により安全性は確保されているものの、使い方次第では肌へ悪影響を及ぼし兼ねません。個々の皮膚には体質などにより確固たる治療法は存在しません。
防御機能が未熟な上、汗や尿などで蒸れやすい環境下で起こるおむつかぶれは、小まめに替えることやお尻ふきでの摩擦を避けるなど、普段からおむつかぶれを予防するケアも大切です。
まとめ
おむつかぶれにワセリンを使用することの有効性
ワセリンとは?
ワセリンが効くおむつかぶれとは?
湿潤療法
さまざまな見解