小児脳腫瘍の予後・余命は腫瘍の種類や発生場所、腫瘍の悪性度によりことなります。脳腫瘍発症は子供の癌患者5人に対して1人に発症する珍しくない病気です。小児の固形癌死亡率でも最も高い死亡率となります。
脳腫瘍は生きるための大切な神経が集中している臓器です。他臓器癌のように丸ごと切除できないことが生存率を低下させています。
ここでは小児 脳腫瘍 の予後・ 余命 についてお伝え致します。
小児脳腫瘍の予後・余命は種類や悪性度で異なる(前編)
小児脳腫瘍とは
子供の癌患者5人に対して1人発症する脳内で発症する固形癌の一種です。大人の脳腫瘍では悪性腫瘍は全体の1/3に対して小児脳腫瘍は2/3が悪性腫瘍です。
原因としては子供には良性腫瘍の髄膜腫や神経鞘腫が少ないからです。子供に多く発症する脳腫瘍は神経膠腫、胚細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫です。
症状として脳圧が上昇し頭痛や嘔吐、手足の麻痺、歩行障害、顔面麻痺、眼球運動障害、視力低下、痙攣などがあります。
小児脳腫瘍は発達状態の脳内に発症することにより子供の脳に大きな影響を与えます。脳腫瘍自体だけが脳に影響を与えるのではありません。脳腫瘍を治すための治療が脳に影響を与えてしまいます。小児脳腫瘍は命の危険がある予後不良な病気です。
また治療が成功したとしても身体的機能(身体・知的など)の予後にも十分に配慮することが重要です。
種類
神経膠腫(グリオーマ)毛様細胞性星細胞腫
神経膠腫は悪性腫瘍なのですが毛様細胞星細胞腫は例外な良性腫瘍です。子供の主に小脳・視神経に発症します。小脳に発症すると嚢胞をつくります。手術で完全摘出すると完治の可能性のある腫瘍です。
視神経にできると視力を犠牲にし全摘出をすれば治ることもあります。視神経の奥から脳に浸透していると全摘出はできません。視神経グリオーマは自然に腫瘍が小さくなる特徴もあります。適切な治療方法の判断が困難でもあります。
脳幹グリオーマ
脳幹は中脳、橋、延髄に分かれている細長い部分です。手足の運動、感覚、呼吸、意識を司る生命の司令塔です。
子供のグリオーマの1/3が脳幹に発症します。生きるために重要な神経が集中しているので手術摘出は極めて困難です。放射線治療や抗がん剤治療は一時的に症状が緩和しますが限界があります。一番治療が困難な小児脳腫瘍です。
胚細胞腫瘍
グリオーマの次に多い小児に発症します。10歳~20歳によく発症します。男児に多く発症しているのが特徴です。脳の中心にある松果体、下垂体によく発症します。
松果体に発症すると眼球を上に向けにくくなります。下垂体発症ではホルモン分泌異常により尿崩症をおこします。尿崩症とは脳から分泌される利尿ホルモンの反応が低下し薄い尿が大量にでる症状です。
胚細胞腫瘍はさまざまな型があるので治療成果も違います。ジャーマンミーノは中でも放射線、抗がん剤が有効で80%治すことができます。しかし胎児性癌や卵黄嚢腫の型は極めて悪性で予後不良です。
最近では医学の進歩により上手く治療を組み合わせることで治療成績が上がっています。
髄芽腫
5歳~9歳によく発症します。小脳中心部に発症して頭痛や吐き気、歩行障害がでます。
髄芽腫によく似た腫瘍でPENT(原始神経外胚葉腫瘍)があります。極めて悪性腫瘍ですが手術全摘出で治る可能性もあります。脳内や脊髄に広がる性質が特徴です。手術後には脳、脊髄に放射線治療が必要となります。放射線治療と併用で抗がん剤治療を加えると5年生存率が70%です。
悪性腫瘍の中では治療成績は高い方です。しかし治療後の後遺症で身体発育や知的発達に影響があることが問題です。
頭蓋内咽頭腫
下垂体と視神経の近くに発症します。周囲の脳や神経を圧迫して尿崩症や視力障害が発症します。種類としては良性腫瘍です。手術で全摘出すれば治癒することも可能です。
実際は脳に浸透して癒着する性質があり全摘出は困難です。放射線治療と抗がん剤治療が必要になります。放射線治療後に脳下垂体ホルモン障害の後遺症を残すことがあります。成長ホルモンと性腺刺激ホルモンの治療が小児科で必要になります。
上衣腫
5歳~9歳に発症します。
上衣細胞に発症します。脳髄液で満たされている場所で腫瘍が大きくなると脳脊髄液の流れを妨げ水頭症になります。脳の下の方に発症すると脳脊髄液を介して他の臓器に転移の可能性があります。
まとめ
小児脳腫瘍の予後・余命は種類や悪性度で異なる(前編)
小児脳腫瘍とは
種類