がんの一種である脳腫瘍は、1万人に1人ほどの発症率だといわれており、がんの中ではそれほど多い病気ではありません。しかし、子どもだけに限ってみると、脳腫瘍は白血病の次に多いがんで、小児がんの20%は脳腫瘍だといわれています。
子どもにとって決して珍しくない病気である脳腫瘍は、実はなかなか気付きにくい病気でもあります。 脳腫瘍 の 症状 がどのように 進行 していくのかを詳しく見ていきましょう。
脳腫瘍の症状はどのように進行するのか
成人と子どもの脳腫瘍は性質が異なる
悪性リンパ腫、神経芽腫、骨肉腫、腎腫瘍……。子どもが発症するがんには、さまざまな種類があります。その中で、全体の約40%を占めているのが白血病(血液のがん)です。そして、その次に多いのが脳腫瘍で20%を占めています。
成人の場合、がんに占める脳腫瘍の割合は5%以下ですから、子どもにとって脳腫瘍は決して珍しい病気とはいえません。
実は脳腫瘍は、成人と子どもでは、発症する頻度や腫瘍のできやすい場所が異なるのです。子どもの脳腫瘍は、神経膠腫(グリオーマ)や髄芽腫といったものが多く、悪性腫瘍になりやすいといわれています。
実際、成人の脳腫瘍のうち悪性腫瘍は約3分の1ですが、子どもの場合は悪性腫瘍が約3分の2を占めます。
脳腫瘍は気付きにくい
脳腫瘍は、脳のどの部分に腫瘍ができるかによって、現れる症状が変わります。そのため、脳腫瘍を早期に発見するのはとても難しいといわれています。
実際に、患者のほとんどは一般的な理由、例えば風邪をひいたような気がする、少し頭が痛い、といったような理由で医療機関を受診し、そこで検査をして初めて脳腫瘍が見つかることが多いようです。
脳腫瘍の症状は、頭蓋内圧亢進症状と脳局所症状の大きく二つに分けられます。
頭蓋内圧亢進症状とは、腫瘍ができ大きくなることで、脳が圧迫されて現れる症状です。頭蓋骨は伸び縮みできない限られた空間のため、腫瘍が大きくなっていくと、その分、他の脳実質が押しやられ圧迫されてしまうのです。
一方、脳局所症状というのは、腫瘍ができた部位に応じて脳神経が影響を受け現れる症状のことです。
最初期の段階では脳局所症状が現れる
一般的に脳腫瘍の最初期の段階では、脳局所症状が現れることがあるといわれています。腫瘍自体はまだそれほど大きくありませんので、脳が圧迫される頭蓋内圧亢進症状は現れません。
ですので、小脳や視床下部など、腫瘍が存在する部位に応じた脳局所症状が見られることがあるのです。
初発症状として最も多いのは、手足などのけいれんです。特に脳腫瘍患者の3分の1はてんかん発作をきたしますので、けいれんは特徴的な症状の一つだといえます。
けいれんの原因がすべて脳腫瘍というわけではありませんが、子どもがけいれんを起こしたら医療機関を受診するようにしてください。
頭蓋内圧亢進症状に見られる三大症状
病状が進行し、腫瘍が大きくなってくると、頭蓋内圧が上昇します。すると、さまざまな頭蓋内圧亢進症状が現れ始めます。
代表的なものは頭痛、嘔吐、うっ血乳頭の三つです。
特に頭痛は、早朝頭痛が脳腫瘍に特徴的なものです。早朝頭痛とは、朝起きたときに最も痛みを感じ、午前中には治まるような頭痛です。もし、こうした頭痛が続くようでしたら、脳腫瘍を疑って医療機関を受診するべきです。
嘔吐の場合は、噴出性嘔吐が見られます。これは吐き気を催さず、いきなり噴出するような嘔吐をするものです。嘔吐した後は、何事もなかったようにけろっとしています。子どもは頭痛をうまく訴えられないことが多いので、この噴出性嘔吐は脳腫瘍を疑う際に重要な症状だといえます。
うっ血乳頭は、目の奥、血管や神経が眼球に出入りするところである視神経乳頭が、圧迫されてうっ血している状態です。初期には視力障害がありませんが、やがてちらつきやかすみ、視力低下を起こします。
検眼鏡で眼底を見るとすぐにわかりますので、うっ血乳頭から脳腫瘍が発見されるケースも少なくありません。
また、これら三大症状の他にも、手足にしびれや麻痺が起こる、よろける、足もとがおぼつかなくなる、顔面がゆがむ、目がうまく動かせなくなる、排尿にいくことが増えるといった症状が見られます。このような症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診するようにしてください。
子どもの脳腫瘍は、発育期にある脳に重大な影響を与えます。手術や放射線といった治療もまた、脳そのものに大きな影響を与えます。よりよい治療を受けるためにも、脳腫瘍の症状を見逃すことなく、いつもと違うと感じることがあれば、かかりつけの医師に相談するようにしましょう。
まとめ
脳腫瘍の症状はどのように進行するのか
成人と子どもの脳腫瘍は性質が異なる
脳腫瘍は気付きにくい
最初期の段階では脳局所症状が現れる
頭蓋内圧亢進症状に見られる三大症状