毎年冬になるとさかんに報道されるノロウイルス。「今シーズンは今まで流行のなかった型のノロウイルスが流行りそうなので、免疫がないから大流行するだろう」などと言われることもあります。同じシーズンに2回以上感染する人もいるけれど、 ノロウイルス に対する 免疫 はできるのでしょうか。
ノロウイルスの免疫はできる?
どうして何度もノロウイルスにかかってしまうの?
予防ワクチンのあるインフルエンザウイルスにはさまざまな型がありますが、その年に流行する型を予測してその型に対する免疫がつくようにワクチンがつくられます。その予測技術は高くなっていてほとんど外れることはないし、混合ワクチンなので定番の数種の型には効果があります。
また、おたふく風邪や風疹のように、一度感染するか予防接種を受けると免疫ができてその後は一生かからない病気もあります。
一方ノロウイルスも、一度かかると同じ型のウイルスにはある程度かかりにくいといわれていますが、その種類は30以上あり変異しやすい性質をもつので、同じシーズンの中でも違う型のウイルスに当たる可能性が高く、そうなればまた同じように症状が出てしまいます。
予防ワクチンも特効薬もなく、感染力が非常に強いウイルスなので予防が難しく、ひとたび家庭に持ち込まれると家族全員感染、ということもよく起こってしまいます。
ノロウイルスの免疫に関する研究
ノロウイルスは培養に成功しておらず、現代の医学でも解明できていないことがたくさんあります。
ノロウイルスは、人の体内に入った後、胃液では死なず小腸の上皮細胞に感染して増殖します。このとき小腸に抗体ができるのですが、このような局所の抗体は持続期間が短く、数ヶ月後にはなくなってしまいます。
実験室での培養が困難なので、ボランティア(実験参加志願者)にノロウイルスを投与して免疫の持続期間などを観察する実験が行われていて、一時ノロウイルスの免疫は6ヶ月~2年程度続くと推定されました。
しかしこうしたさまざまな研究の結果には相当のばらつきがあって、短期の免疫を獲得できることはわかっているものの、その期間がどのくらいかということについてははっきりしたことはわかっていません。
つまり人によって、また体内に入ったウイルスの量によっても免疫の持続期間は変わってくるのです。
「免疫力」が高ければ感染しにくいのか
体外から病原菌やウイルスなどが侵入するのを防いだり、体内にできた有害な細胞を除去したりする自己防衛機能を「免疫」といい、病原菌やウイルスと戦う力を「免疫力」といいます。
日ごろから運動をして免疫力が高いひとは一般的にウイルスに感染しにくく、感染してもそれほど重症化しないことがわかっています。免疫力とノロウイルス感染との関連はまだ解明されていませんが、ノロウイルスにもある程度は当てはまるようです。
逆に一般の成人と比べると、乳幼児や妊婦、高齢者は免疫力が低く、感染した際に嘔吐や下痢による脱水症状が悪化して重症化しやすいので注意が必要です。
母乳育児の赤ちゃんもノロウイルスにかかる
母乳は「天然のワクチン」とも言われ、赤ちゃんがお母さんの持っている免疫をもらうことができるので病気にかかりにくい身体をつくることができますが、母乳を与えていれば赤ちゃんがノロウイルスにかからないということはありません。
お母さんが感染した場合、母乳から赤ちゃんにうつることはないので授乳を続けることはできますが、経口感染でうつってしまうので離乳食をつくるときや赤ちゃんと接する前には充分に除菌することが必要です。
ノロウイルスにかかりにくくなるには
予防ワクチンがなく、有効な薬もなく、また免疫も持続しないとなると感染はまぬかれないように思いますが、ウイルスと接する量によって症状に差が出ることがわかっています。
ノロウイルスは感染力が非常に強く、10個~100個のウイルスで感染するといわれていますが、感染者の嘔吐物や排便の処理に関わる時にマスクや手袋をつけてウイルスと直接接する量をできるだけ減らすことで、感染しても症状が軽くなります。
日常的に十分な手洗いの習慣をつけておくことも、ウイルスの数を減らすという意味でとても有効です。
また、日ごろからバランスのとれた食事、良質な睡眠、運動や血行を良くする工夫などを心がけて免疫力を高めておくことは、ノロウイルスを含めたあらゆる病原菌やウイルスから身を守るためにも大切だといえるでしょう。
まとめ
ノロウイルスの免疫はできる?
どうして何度もノロウイルスにかかってしまうの?
ノロウイルスの免疫に関する研究
「免疫力」が高ければ感染しにくいのか
母乳育児の赤ちゃんもノロウイルスにかかる
ノロウイルスにかかりにくくなるには