口の中にいるだけだと思われていた 虫歯菌 ですが、実は血流にのって全身を巡り、 脳 にまで到達することがあるということが分かってきました。脳梗塞や脳卒中、心筋梗塞など命に関わる病気を引き起こす場合もあるということを知っておくことが非常に大切です。
虫歯菌が脳にまで到達するって本当?
虫歯菌とは?
いわゆる虫歯菌と呼ばれる細菌は、ミュータンス菌のことで約1μm(1/1000mm)の球状をしている菌です。プラークという歯垢となり、歯の表面に付いて糖質から酸を作ります。このとき作られる酸が、歯の主な成分であるリンやカルシウムを溶かしてしまい、歯を脆くしてしまいます。
飴やガムなどの甘いお菓子には酸のもととなる糖質がたっぷり入っています。甘いお菓子をたくさん摂取していると歯の表面が酸に侵される時間が長くなり、虫歯になりやすくなります。
虫歯菌はどうやって脳に行くの?
虫歯菌は治療をせずに放置すると、骨や歯茎にまで到達してしまいます。
骨のまわりにはたくさんの血管があり、虫歯菌はこの血管から侵入して、血流にのって全身を巡り、ついには脳にまで到達します。ミュータンス菌の大きさは約1μmなので、血管への侵入を阻止することは難しいと言われています。
虫歯菌が脳に入るとどうなるの?
虫歯菌が血管に入ると、そこで炎症が起きて、血栓を作り出します。このときできた血栓が脳にまで到達すると脳静脈血栓症という病気が発症します。
さしこむような強い痛みの頭痛や、吐き気、嘔吐がみられる場合は歯医者ではなく、大きな病院の頭痛外来や脳外科などにかかるようにしましょう。
ミュータンス菌は血流にのって、体の中を巡っていきます。血液は全身を循環しているため、時に心臓で心内膜炎や心筋梗塞などを引き起こすこともあります。また、虫歯菌を含んだ唾液を誤嚥してしまうと、肺に到達した虫歯菌が炎症を引き起こして、肺炎を発症することもあります。
明らかになってきた虫歯菌による脳卒中
最近の研究で虫歯菌は脳梗塞だけではなく、脳卒中を引き起こすこともわかってきました。ミュータンス菌が血管壁のコラーゲンと結びつくことで、血管の傷口部分に集まり、血小板の本来の働きである止血作用を阻害し、脳内で炎症を起こして脳出血を発症させます。
年齢や生活習慣の影響で硬くなってしまった脳の血管に対して、虫歯菌が傷害を引き起こし、脆くなっている血管が裂けて、微小な脳内出血が多く発症します。
脳出血は高齢者だけではなく、若い年齢層の人にも起こるもので、命に関わる重篤な状態に陥ることもあるということを知っておくことが非常に大切です。
虫歯菌が脳に行かないようにするにはどうしたらいい?
虫歯菌をそのままにしたとしても、すべての人が脳静脈血栓症や脳出血、心内膜炎などを発症するとは限りません。健康な状態のときには、虫歯菌が血管に侵入してしまっても、白血球や免疫細胞などが働き、虫歯菌を除去します。
これはどの年齢層にも言えることですが、疲労が重なっていたり、なんらかの病気で抵抗力が落ちていたりするときは虫歯菌を除去することができないこともあるので、特に気を付ける必要があります。
虫歯になってしまったら、できるだけ早い段階で処置を施すことが、虫歯菌を血管に入れないようにする上で大変大切です。
また、虫歯にならないようにする「虫歯予防」の観点から、子どもの歯磨きは仕上げ磨きを行い、常に口腔内の状態について気を付けてあげることが必要です。
子どもの場合は、定期的にかかりつけの歯医者に行くことでフッ素塗布を行ったり、初期虫歯のチェックをしたりすることができます。
また、歯医者で適切な指導を受けることで、親の仕上げ磨きのくせや磨き残しの多い部分を知ることもできます。小学校低学年までの子どもの歯は親が仕上げ磨きをしっかりと行い、虫歯にしないように努力しましょう。
まとめ
虫歯菌が脳にまで到達するって本当?
虫歯菌とは?
虫歯菌はどうやって脳に行くの?
虫歯菌が脳に入るとどうなるの?
明らかになってきた虫歯菌による脳卒中
虫歯菌が脳に行かないようにするにはどうしたらいい?