「日本人特有の病気 もやもや病(前編)」では、日本人に発症が多く認められるもやもや病とはどのような疾患なのかご説明致しました。ですが、もやもや病の原因と考えられる遺伝子変異が発見されましたが、発症のメカニズムについては現時点ではまだはっきりしていません。
後編では、 もやもや病 の診断について、そしてその後の治療法についてご紹介致します。
日本人特有の病気 もやもや病(後編)
脳虚血症状を引き起こす過呼吸
脳虚血症状は、過呼吸が原因で起こります。過呼吸といっても特別なものではなく、例えば「ラーメンを吹いて冷ます」「リコーダーやハーモニカを吹く」「大泣きをする」「激しい運動をする」といった日常的にありふれた、少し大きく息をするような行動が原因になります。
こうした過呼吸を起こすと、血液中の二酸化炭素の量が減少し、それに伴って血管が収縮します。すると、もやもや病のため、もともと血流量が少なくなっている脳が虚血状態になるのです。
子供に現れる脳虚血症状としては、けいれん、脱力発作、まひ、失語、勝手に手足が動く不随意運動、気を失うといった意識障害といったものです。
「うどんを食べると手足がしびれる」「朝起きたときに頭痛を感じて学校を休むが、午後には治まる」というのも、もやもや病特有の症状です。3歳以下でもやもや病を発症した子供のうち、30~40%に知的障害が現れる可能性があると言われています。
確定診断は画像検査によって行う
もやもや病は、画像検査によって脳血管の狭窄・閉塞やもやもや血管の有無を調べ、確定診断されます。画像検査は、MRA、MRIといった磁力を用いた撮影装置や、造影剤を用いた脳血管撮影を行います。
子供の場合は、MRAで狭窄・閉塞やもやもや血管が確認できれば、脳血管造影撮影はしないことが多いです。もやもや病は、動脈の狭窄のみが認められる第1期から、内頚動脈やもやもや血管も消えて頭蓋骨の外側を通る外頚動脈系から脳に血液を送るようになる第6期までに分類されます。
子供の治療は外科手術が多い
子供の場合、脳が成長するためには十分な血液が必要だという考えから、外科手術による治療が多く行われます。手術によって、頭蓋骨の外側にある浅側頭動脈に流れる血液を脳に送り込むのです。手術には、直接バイパス術と間接バイパス術の2種類があります。
直接バイパス術は、頭蓋骨を開き、浅側頭動脈を脳にある中大脳脈に直接つなぐ方法です。脳に十分な血液を送ることができるので虚血症状を改善できるほか、もやもや血管の負荷が減ることで脳出血のリスクを抑えることも期待できます。
間接バイパス術は、血管を直接つなぐのではなく、浅側頭動脈を脳に接触させる、あるいは側頭部の筋肉を脳に接触させることで、そこから新しい血管を発生させ、脳に血液を送るようにする方法です。
間接バイパス術には即効性はなく、効果が現れるのは新しい血管ができる数ヶ月後です。しかし、直接バイパス術に比べて、手術の危険性は低くなります。
直接バイパス術と間接バイパス術の両方を組み合わせることもあります。どの方法を選択するかは、医療機関によって考え方が異なります。
まとめ
日本人特有の病気 もやもや病(後編)
脳虚血症状を引き起こす過呼吸
確定診断は画像検査によって行う
子供の治療は外科手術が多い