みずぼうそう (水疱瘡)とは水痘のことで、全身に水疱性発疹が現れる伝染病のことです。子供によく見られる病気で、6歳までに約80%が感染すると言われています。多くの人になじみのある病気ですが、あまり知られていない一面をご紹介しましょう。
水痘はなぜ「みずぼうそう」と呼ばれるのか
天然痘と区別するため「みずぼうそう」と呼ばれた
「みずぼうそう(水疱瘡)」の正式名称は「水痘」です。俗に「みずぼうそう(水疱瘡)」と呼ばれているのは、症状が似ている「天然痘(疱瘡・痘瘡)」と区別するためです。
天然痘は、かつて何度も流行を繰り返した伝染病です。致死率が20~30%と高く、最も恐れられた病気の一つです。天然痘は、1980年5月に世界保健機関(WHO)が根絶宣言を出しました。いわば人類が初めて撲滅に成功した病気でもあります。
この天然痘と水痘は、症状の見た目がとてもよく似ています。しかし、病気の重さは全く異なるものです。そこで、天然痘(疱瘡)と区別するために「みずぼうそう(水疱瘡)」と呼ぶようになったと考えられます。
水痘と天然痘の違いとは
水痘と天然痘は、原因となるウイルスが異なります。また、発疹の見た目こそ似ていますが、症状の現れ方は全く異なっています。
水痘は発疹が現れるとともに発熱しますが、天然痘は発疹が現れる2~4日前から熱が出ます。
また、水痘は発疹の進行が速く、すぐに水を持った水疱になり、それが水のにごった膿疱になって、1週間ほどで黒いかさぶたになります。そのため、水疱、膿疱、かさぶたが混在して見られます。
一方、天然痘は、発疹はゆっくりと進行し、かさぶたになるのは10日以上たってからです。水疱やかさぶたが混在することもなく、一様に進行していくのも特徴の一つです。
水疱のできる場所が異なるのも特徴です。両方とも全身に水疱ができますが、水痘は手足にできることは少なく胴体を中心にできます。逆に天然痘は、手足のほうによくできます。特に手のひらや足の裏にもできるのが天然痘の特徴で、水痘の場合はほとんどできません。
水痘と帯状疱疹は同じウイルスが原因
水痘の原因となるウイルスは、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)です。実は、水痘・帯状疱疹ウイルスは、治った後も三叉神経節や脊髄後根神経節に潜伏し続けます。そして、成人になってから、潜伏していたウイルスが再び活性化して発症するのが、帯状疱疹です。
潜伏していたウイルスが活性化するきっかけはさまざまですが、疲労やストレス、化学療法や放射線療法、副腎皮質ホルモンの投与などが考えられます。
帯状疱疹は発熱を伴わず、神経痛のような痛みから症状が現れます。発疹は、身体の片側だけに現れるのも特徴の一つです。
この帯状疱疹は、10歳以下の子供が発症することはほとんどありません。ただし、例えば骨髄移植をした後など、何らかの原因で免疫力が低下している子供は発症することがあります。
また、帯状疱疹には当然感染力がありますので、水痘にかかったことのない子供が、帯状疱疹を発症している成人の近くにいるとVZVに感染することがあります。
まれに見られる水痘の合併症
水痘の全身症状は、良好に治っていきます。水疱の跡もしばらくは残りますが、やがて消えますので心配ありません。そのため、よほど免疫力が低下していないかぎりは対症療法で十分です。
ただし、まれに肺炎や脳炎、髄膜炎を合併することがあります。また、ライ症候群や急性小脳失調症を合併することもあります。
特に、ライ症候群はアスピリンを服用すると発症する危険のあることが分かっていますので、解熱剤は必ず医師が処方したものを飲ませるようにしてください。もし、少しでもおかしいと感じることがあれば、医師に相談するようにしてください。
まとめ
水痘はなぜ「みずぼうそう」と呼ばれるのか
天然痘と区別するため「みずぼうそう」と呼ばれた
水痘と天然痘の違いとは
水痘と帯状疱疹は同じウイルスが原因
まれに見られる水痘の合併症