赤ちゃんはお母さんのお腹の中で十分な時間をかけて臓器を成長させてから生まれてきます。予定よりも早く生まれた赤ちゃんは、早く生まれてしまったぶん臓器の成長が未熟なためにさまざまな健康上のリスクが高くなります。
「未熟児網膜症」もそのひとつで、重篤な場合は失明の可能性もあります。
今回はこの「 未熟児網膜症 」について説明します。
大切な赤ちゃんの目が危ない?「未熟児網膜症」とは
どんなときに発症する?
未熟児とは、一般的には出生時の体重が2,500グラム未満で、かつ早産で生まれた赤ちゃんのことをいいます(通常では37~42週未満で生まれるところ、37週未満の場合に「早産」となります)。
赤ちゃんの網膜は36週頃に完成されるので「早産」=未熟児網膜症の危険!?と思われるかもしれませんが、実際には自然治癒するケースも多く、注意が必要なのは在胎34週以下で出生体重1,800グラム未満の場合です。
さらに、出生体重が1,500グラム未満で60%、28週未満ではほぼ100%発症するといわれています。
原因は?
十分な臓器の成長ができないうちに赤ちゃんが生まれてしまうと、網膜の血管が途中までしか成長できません。
赤ちゃんが胎内から外に出ると酸素濃度の関係で網膜の血管が収縮し、そこから異常な血管が枝分かれしていきます。これらの血管が脆く破れやすいために出血を起こして、視力低下や失明の原因となります。
注目すべき2種類の症状
未熟児網膜症は、進行速度を目安として2種類に分類されます。時間をかけて徐々に進行していくⅠ型、急速に症状が進行するⅡ型です。
Ⅰ型は症状の進行具合が5段階にわけられており、このうち1段階と2段階までは自然治癒の可能性が高く、経過観察が行われます。
3段階では前述の脆い血管が発生し、この段階までくると積極的な治癒が必要となります。4段階では網膜剥離が発生し、5段階ではこれがさらに拡大します。
Ⅱ型は在胎期間が少ない超低体重出生児(1,000グラム未満)に多く発生します。急速に網膜剥離に進行して失明する、危険度の高いタイプです。重症化しやすく、Ⅱ型と診断されたら即座に治療が必要とされます。
どのような治療が行われる?
まず未熟児網膜症が疑われる場合は、外見からは判断できないため、角膜の上から光を当てて目の内側を見る眼底検査をします。ここで未熟児網膜症の進行具合を確認し、症状に合わせた治療が行われます。
検査の結果、Ⅰ型で進行具合が2段階までの場合は経過観察となりますが、Ⅰ型の3段階以上、またはⅡ型の場合はレーザー治療が行われます。
レーザー治療では、網膜剥離の原因となる網膜部分を焼きます。これによって異常血管の発生原因を消してしまうわけです。この治療は1回では終わらずに、様子を見ながら複数回おこなわれます。
このレーザー治療でも症状の改善が見られない場合、外科手術をすることになります。「強膜輪状締結術」というもので、眼球にスポンジを巻いて眼球を圧迫します。
これが効果をあらわさない場合はさらに「硝子体手術」といって、網膜を引っ張る硝子体や増殖組織を除去する手術を行います。
病気が治ったら
未熟児網膜症が発症したとしても、Ⅰ型の1段階、2段階から自然治癒した場合は視力への影響はありません。
ただし、早産で生まれた赤ちゃんはいわゆる「近視」や、屈性異常のために目のピントが合いにくい「乱視」、視線が合わない「斜視」を合併することがあります。また、何らかの病気などが視力の発達に影響することもありますので、定期的な眼科検診を行うべきでしょう。
レーザー治療をした場合は、症状の度合いによってさまざまな影響がでます。視覚の成長には黄斑部の発達が必要ですが、ここに問題がなければ日常生活や学習を行える程度には回復します。
ただし、近視になる可能性も高いようです。黄斑部に何らかの影響があった場合は、強度の視力障害を引き起こしてしまいます。そのため、外科手術を行った場合も同様ですが、長期的な診察・治療が必要となるでしょう。
小学校以降も注意しましょう
未熟児網膜症が治り赤ちゃんが成長しても、網膜自体が弱っているので再び網膜剥離や硝子体出血をおこすことがあります。特に小学校前後に再発することが多いので、医師とも相談しながら、長期的に見守ってあげてください。
まとめ
大切な赤ちゃんの目が危ない?「未熟児網膜症」とは
どんなときに発症する?
原因は?
注目すべき2種類の症状
どのような治療が行われる?
病気が治ったら
小学校以降も注意しましょう