足などの骨が曲がって変形し、進行すると歩行できなくなることもあるクル病の原因や症状、治療法などについてまとめるほか、戦後の食糧事情の改善とともに姿を消し、過去の病気と思われてきた クル病 がなぜ、再び近年増加傾向にあるのかその原因についてまとめます。
進行すると歩けなくなることもあるクル病とは
クル病の概要とその原因
ビタミンD欠乏症の1つで骨端線閉鎖が完了する前の病態を「クル病」、完了した後の病態を「骨軟化症」と呼び、区別しています。ビタミンD欠乏症とは血液中のビタミンDの濃度が低い病態のことを言います。
クル病の原因には遺伝的なもののほか、カルシウムまたはリン酸の摂取不足、低出生体重児や極小未熟児に頻発するといわれています。
ビタミンDについて
ビタミンDは後で述べる働きのほかに血液中のカルシウム濃度を一定に保つ作用があり、摂りすぎると、高カリウム血症、腎機能障害、軟組織の石灰化障害が起きます。
しかしビタミンDの過剰症はサプリメント等で大量に摂取した場合に起こり、食事で起こることはほとんどないといわれています。では、私たちは普段どのようにしてビタミンDを摂取しているのかというと食べ物から摂取するか皮膚が日光に当たることでも体内で作られます。
ビタミンDを多く含む食品としてたまご(卵黄)、魚(あんこうのきも)などがあります。
なぜビタミンDが不足するとクル病になるのか
ビタミンD欠乏症の1つであるクル病ですが、そもそもなぜビタミンDが不足することでクル病になってしまうのでしょうか。それを理解するためにはビタミンDの働きを理解することが必要です。
骨はカルシウムやリン、炭酸などからできていますが、その中で最も多いのはカルシウムです。ビタミンDにはこのカルシウムやミネラルの吸収を助ける働きがあり、その働きによって骨が丈夫になるため、骨の成長には欠かせないビタミンです。
つまり、ビタミンDが不足するとカルシウムの吸収がうまくできず、骨が硬くならない結果、クル病を発症してしまうのです。
クル病の症状
クル病の症状には骨の変形(頭蓋骨の軟化、鳩胸、O脚、X脚、脊柱の側彎、前彎、後彎)、筋緊張低下、低カルシウム血症、その他に低身長などの症状を引き起こします。
クル病の治療法
クル病の治療は不足しているビタミンDを投与することで行いますが、後述するように誤った食習慣や生活習慣によるビタミンDの不足ということも多いため、食習慣や生活習慣の見直しも必要だと言われています。
副作用としてビタミンDを投与するので過剰症と同じような状態になるため、ビタミンD過剰症として腎結石、高カルシウム血症、高リン酸血症、サルコイドーシスになることもあります。
なぜ、過去の病気と思われていたクル病が近年増加傾向にあるのか
クル病が近年増加傾向にある理由は誤った食習慣と生活習慣によるものが大きいと指摘されています。
具体的には紫外線による皮膚がん発症のリスク低減や子どもの親が美容を目的として過度に紫外線を避ける生活習慣が広まったこと、人工乳(粉ミルク)を使用せず母乳のみを利用した授乳(母乳育児は免疫機能の獲得など赤ちゃんにとってとてもいいことですが、ミルクに比べてビタミンDだけは非常に少ないことが分かっています)、アレルギー対策として行われる不適切な除去食によって摂取量が不足してしまうことがあげられます。
つまり、母親にビタミンD欠乏症があるとその子どももビタミンD欠乏症になる可能性が高いといえます。
完全母乳保育がクル病の原因というような書き方をしていますがこれは母乳による育児を否定するものではなく、母乳のみで子育てをする場合にはビタミンDが不足してしまうということを知っていただくためにこのような記述の仕方をしました。ご了承ください。
まとめ
進行すると歩けなくなることもあるクル病とは
クル病の概要とその原因
ビタミンDについて
なぜビタミンDが不足するとクル病になるのか
クル病の症状
クル病の治療法
なぜ、過去の病気と思われていたクル病が近年増加傾向にあるのか