クループ症候群では、まるでオットセイや犬の鳴き声のような咳が出ます。はじめて聞くと恐ろしく感じられる咳で、やがて息ができなくなるのではないかと心配になる人が多いようです。 クループ症候群 になったとき、どういった対処が求められるのか、見ていくことにしましょう。
恐ろしげな咳の出るクループ症候群
クループ症候群は病名ではない
クループ症候群は、病名ではありません。オットセイや犬が鳴くような咳が出たり、声がかすれたり、息が苦しくなったりといった症状の総称です。こうした症状は、さまざまな原因によって、のどの奥が腫れて気管が狭くなるために起こります。
声を出す器官である声帯の少し奥側の気管は、血管やリンパ管が多いため、ウイルスや細菌が感染すると炎症を起こしやすく、よく腫れるところです。この部分が腫れると、空気の通り道である気道が狭くなって、独特の咳が出たり、かすれ声になったりします。
特に乳幼児は、この部分が大人に比べると狭いため、少し腫れただけで症状が出てしまいます。
クループ症候群は、炎症の原因や腫れる箇所によって、大きく「ウイルス性クループ」と「痙性クループ」、「急性喉頭蓋炎」の3つに分かれます。このうち子供が多く発症するのは「ウイルス性クループ」です。
ウイルス性クループはなぜ起こるのか
ウイルス性クループは、ウイルスが感染することによって発症します。感染する原因ウイルスにはいろいろありますが、もっとも多いのはパラインフルエンザウイルスです。3ヵ月~3歳の乳幼児に多く見られ、特に男の子がかかりやすい傾向があります。
原因ウイルスに感染すると、はじめは鼻水や発熱といった風邪のような症状が見られます。そのうち、気道が腫れていくにしたがって、ゼイゼイ言ったり、オットセイや犬の鳴き声のような咳をしたりといった症状が現れ始めます。
どういった治療を行うのか
病医院では、問診や咳の具合を診て、クループ症候群かどうかを診断します。レントゲン撮影や内視鏡を用いて、気管の腫れ具合を確認することもあります。
治療としては、基本的にエピネフリンの吸入が行われます。エピネフリンは、血管を収縮し、腫れを軽減する作用が認められている薬剤です。ただ、インフルエンザのように、原因ウイルスに直接効くような特効薬は存在しません。そのため、治療の第一は安静に過ごすことになります。
特に子供の場合は、気管を刺激すると症状が悪化することがあるので、安静を保つことが大切です。咳がひどいときに効果的なのが、蒸気です。蒸気を吸うと、気道の奥深くまで入り込んで、からんだ濃い粘液を薄めてくれるため、咳を鎮めるのに効果があるのです。
お湯のシャワーを全開にして浴室を蒸気で満たし、そこに5~10分ほどとどまって蒸気を吸わせてみてください。かなり楽になると思います。
また、クループ症候群の原因ウイルスは乾燥を好みますし、気管が乾燥すると症状が悪化するので、加湿器などを用いて、部屋を加湿するように心がけてください。多くの場合は、1週間程度で症状が軽くなります。
痙性クループは短時間で収まる
痙性クループは、もともとアレルギーなどを持っているところに、ウイルスなどの感染が引き金になって、クループ症候群の症状を発症するものです。ウイルス性クループと違って、熱が出ないのが特徴です。
また、痙性クループは、風邪のような先行症状はまったく見られず、いきなり発症します。夜中に突然起き上がって、犬の鳴き声のような咳をして苦しみ始めるのです。
ただ、ほとんどは短時間の間に症状が軽くなりますので、それほど心配はいりません。症状が重いときは、ウイルス性クループに準じた治療が行われます。
急性喉頭蓋炎には注意が必要
急性喉頭蓋炎は、ウイルス性クループとは異なって、声帯の奥ではなく手前、舌の根元から喉頭蓋あたりが炎症を起こします。主にインフルエンザ桿菌という細菌が感染して発症します。
西欧では2~5歳の幼児に多いとされていますが、日本では30~40歳の成人に多い病気です。そのため、子供にはあまり見られませんが、症状が強いため注意が必要です。
発症は、急激な発熱とのどの痛みから始まります。のどが痛いため、だ液を飲み込めず、よだれを垂らす姿もよく見られます。この病気の恐ろしいところは、症状が急速に悪化する可能性があることです。
医療関係者の間では「電撃的」という表現が使われるほど、突然に呼吸困難が進み、窒息してしまうことがあるのです。処置が遅れると、そのまま死に至ります。気道確保が必要な場合は気管内挿管や気管切開を行うこともありますが、処置が適切であれば、副作用もなく回復します。
まとめ
恐ろしげな咳の出るクループ症候群
クループ症候群は病名ではない
ウイルス性クループはなぜ起こるのか
どういった治療を行うのか
痙性クループは短時間で収まる
急性喉頭蓋炎には注意が必要