子どもの健全な発育に重要な甲状腺の働きが弱い クレチン症 は新生児マススクリーニングで発見されることが多い病気です。生後2週間までに治療を開始すると、大人になってから普通の人と変わらぬ生活を送ることができるようになるため、早期発見が非常に重要です。
早期の治療開始が非常に重要な先天性のクレチン症
クレチン症とは?
クレチン症の正式名称は先天性甲状腺機能低下症といい、生まれつき甲状腺ホルモンが不足して起こる病気です。3000人から5000人に一人の発生頻度で起こります。症状が軽いものから非常に重度のもの、一時的に発症するものなど人によってあらわれかたが異なります。
甲状腺ホルモンは体の発育と知能の発達には大変重要な働きを持つホルモンなので、治療しないと正常な発育、発達が望めなくなることがあります。早期に病気を発見し、治療開始することがとても大切です。
クレチン症の原因
クレチン症は生まれつきの病気ですが、なぜ先天的に甲状腺の働きが弱くなってしまうのかという原因はまだはっきりと解明されていません。
胎児のころに甲状腺が正しく作られなかったり、まったく作られなかったりすることを欠損性といい、ほかにも本来、のど仏の下あたりにある甲状腺が舌根部などにできてしまう異所性(いしょせい)のもの、甲状腺ホルモンを合成する際になんらかの問題が起きてしまうものなどもあります。
下垂体や視床下部などの甲状腺ホルモンの分泌に関わる機能障害によるものなどもあると言われています。最近では、原因となる遺伝子を探す研究も進められています。
また、妊娠中に妊婦が過剰なヨード摂取をすることで胎児の甲状腺に影響が出ることがわかってきています。クレチン症との関連は明確にされていませんが、妊娠中にはヨードは過剰摂取しないように注意すべき栄養素であるということを頭に置いておくとよいでしょう。
どんな風にあらわれる?
出生後、早い段階で黄疸が長引いたり、弱くかすれた泣き声をしていたり、便秘になったりします。手足が冷たく、元気がない、おっぱいの飲みが良くないといった症状もあらわれます。
また、舌が大きかったり、まぶたが浮腫んでいたりといった身体的な所見もみとめられます。皮膚が乾いていたり、甲状腺が腫れていたりすることもあります。また、長期的には発育不全で低身長になったり、知能の発達に遅れがみられたりすることもあります。
日本では、新生児マススクリーニングが行われるため、実際には症状があらわれる前に発見されることが多い病気です。ただ、新生児マススクリーニングで発見できないという症例もあるため、気になることがある場合は小児科を受診するようにすると安心です。
クレチン症の検査と診断
生後5日から7日頃に、血液の中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)の測定を行い、マススクリーニングをします。地域によって検査方法は異なっており、遊離サイロキシン(FT4)の測定を同時に行うところもあります。甲状腺刺激ホルモンの値が高いときは再度採血を行い、精密検査となります。
精密検査では、血液検査のほか、大腿骨遠位端骨格のX線検査や甲状腺のエコー検査などを行います。
一時的な甲状腺機能低下との識別のため、母親が甲状腺に関する病気にかかっていないか、イソジンを日常的に使用していないか、ヨードを摂りすぎていないかといった確認も大切になります。
どのように治療する?
生後数か月は甲状腺ホルモンの働きが知的な発達に非常に重要とされています。甲状腺の機能低下が疑われた場合は、すぐに治療を開始します。
まずは1日1回、レボチロキシンナトリウムという甲状腺ホルモンの薬を内服します。どのくらいの量を内服するかは、血液検査やそのほかの検査の値を見て決めていきます。
生後2週間までの間に、甲状腺ホルモン薬できちんと治療開始できると、普通の人と変わらない生活を送ることができるようになることが多いと言われています。
「一過性甲状腺機能低下症」であるのか「永続性のクレチン症」なのかということを見極めるため、3歳以降の適切な時期にいったん、薬の内服をやめ、入院して病型診断を行います。
病型診断を行った結果、永続性であると判断された場合は身長の伸びが落ち着くころ(男子は17歳ごろ、女子は14歳ごろ)まで薬の内服を続けます。
病型診断で甲状腺機能が正常であるとされた場合は、思春期まで年に数度の血液検査を続け、甲状腺機能と身長、体重などの発育を経過観察していきます。
まとめ
早期の治療開始が非常に重要な先天性のクレチン症
クレチン症とは?
クレチン症の原因
どんな風にあらわれる?
クレチン症の検査と診断
どのように治療する?