生後間もない新生児に見られる血管腫には、さまざまな種類があります。しかし、全く別の疾患にかかわらず、症状が似ていることから、混同されることが少なくありません。
血管腫 には、どんなものがあり、どのような 症状 を呈するのか詳しく見ていきましょう。
血管腫は種類によって現れる症状が異なる
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苺のようなあざができる乳児血管腫
乳児血管腫は血管性腫瘍の一つで、血管内皮細胞が異常に増殖して腫瘍となったものです。生まれてから数日~1カ月以内に細胞が増殖をはじめ、淡い紅斑が発生します。発生する場所は、頭頸部が60%、身体が25%、手足が15%とされています。
淡い紅斑は、3カ月~1年くらいをかけて、徐々に盛り上がっていきます。表面は鮮やか赤色で凹凸があり、苺のように見えることから、苺状血管腫とも呼ばれています。
乳児血管腫は3つに分類される
乳児血管腫(苺状血管腫)は、皮膚表面からの深さと盛り上がり方によって、3つの型に分類されており、それぞれ症状が異なります。
皮膚表面に扁平に隆起するものを局面型と呼びます。触ると周囲よりもほんの少し温かく感じますが、拍動は感じません。局面型は、他の2つの型よりも早くに消退するため、見た目の問題も少ないと言われています。
腫瘤型は半球状に隆起するもので、皮膚表面からの盛り上がりも大きく、触ると皮膚の下にも固まりがあるのがわかります。また、熱感や拍動を感じることが多いと言われています。擦れると、出血したり、傷ができて細菌などが感染したりすることがあります。
皮下型は、皮膚の下に血管腫が生じるため、赤色斑は見られませんが、触れるとはっきりとした固まりがわかるものです。
血管腫が塊となって現れる腫瘤型と皮下型は、発生する場所と大きさによっては、機能的な問題が生じることがあります。例えば、鼻や首にできると呼吸困難、まぶたや眼窩にできると弱視や乱視、口唇の場合は哺乳困難などが起こります。
乳児血管腫と混同されやすい血管腫
皮下型の乳児血管腫と混同されやすい血管腫に、海綿状血管腫があります。これは静脈の奇形で、静脈が絡まって塊のようになったものです。乳児血管腫と海綿状血管腫の大きな違いは、一つは生まれたときに存在するかどうかです。
海綿状血管腫は出生時より存在しますが、乳児血管腫は出生後しばらくたってから発生することがほとんどです。
次に、海綿状血管腫は自然に消退することはありませんが、乳児血管腫は時間がたつと消退します。このことから、乳児血管腫と海綿状血管腫の判別は、経過を観察することで行います。
出生時から見られる単純性血管腫
真皮内の毛細血管が、増加したり拡張したりするものを単純性血管腫と言います。単純性血管腫は血管奇形の一つで、ポートワイン母斑とも呼ばれています。出生時から境界のはっきりした赤いあざが見られ、あざの大きさは大小さまざまです。
血管奇形のため、自然に消退することはなく、成長とともに色が濃くなったり、大きくなったりします。生まれてすぐは紅色をしていることが多いですが、1~2カ月たつとピンク色や赤色に変化し、成人になるにつれ徐々に暗赤色になります。
自然消退することもあるサモンパッチ
単純性血管腫は自然に消退しないのが通常ですが、なかには消退するものがあります。頭部の中心に現れる、正中部母斑です。正中部母斑のうち、額の真ん中から眉間にかけてできるものをサモンパッチ、頭頂部からうなじにかけてできるものをウンナ母斑と呼びます。
サモンパッチは、生後1~2年で自然に消退すると言われています。一方、ウンナ母斑は半数以上は自然消退しないとされています。
さまざまな症状が合併するスタージ-ウエーバー症候群
顔の口より上の部分(三叉神経第1枝または第2枝領域)の片側に単純性血管腫が現れるのが、スタージ-ウエーバー症候群です。スタージ-ウエーバー症候群は顔面だけでなく、脳軟膜や眼の脈絡膜にも血管奇形が現れる症候群で、23万人に1人が発症すると推定されています。
発症すると、脳軟膜の血管腫による中枢神経障害や、眼脈絡膜の血管腫による緑内障を合併します。1歳までに80%の患者でけいれんを起こし、約半数に精神発達遅滞が見られると言われています。
このように、血管腫にはさまざまな種類があり、これまで症状が似ていることから混同されていたものもありましたが、現在は血管腫・血管奇形診療ガイドラインによって、体系化されています。
まとめ
血管腫は種類によって現れる症状が異なる
苺のようなあざができる乳児血管腫
乳児血管腫は3つに分類される
乳児血管腫と混同されやすい血管腫
出生時から見られる単純性血管腫
自然消退することもあるサモンパッチ
さまざまな症状が合併するスタージ-ウエーバー症候群