血管腫とは、生後間もない新生児に見られる血管のできもののことです。皮膚や皮膚下にでき赤く見えるので、赤アザと呼ばれることもあります。 血管腫 にはさまざまな種類があり、それぞれ 治療 に対する考え方が異なります。どのような治療が行われるのか、見ていきましょう。
種類によって治療が変わる血管腫
治療の必要がない乳児血管腫(苺状血管腫)
乳児血管腫は、血管の細胞が増殖して良性の腫瘍になる病気です。鮮やかな赤色をしていて、表面に凹凸があることから、苺状血管腫と呼ばれることもあります。乳児血管腫は、生後数日から1カ月の間に出現して、どんどん大きくなり、1歳6カ月ごろに大きさのピークを迎えます。
その後は、徐々に小さくなっていき、5~7歳までに90%以上は消失するといわれています。そのため、乳児血管腫は経過観察のみで、特に治療の必要がないとされています。ただし、見た目の問題から、レーザー治療や切除が行われることがあります。
また、乳児血管腫ができる場所によっては他臓器に悪い影響を与えることがあり、その場合は薬物治療や外科手術が行われることもあります。薬物治療には、副腎皮質ステロイドやプロプラノロール、インターフェロンなどが用いられます。
レーザー治療が行われる毛細血管奇形
毛細血管奇形は、皮膚や粘膜の毛細血管が異常に増殖や拡張をし、境界がはっきりした紅斑が現れる病気です。かつては単純性血管腫と呼ばれていて、ポートワイン母斑や毛細血管拡張症、被角血管腫などがあります。
単純性血管腫は、乳児血管腫のように自然に消えることはなく、成長とともに色が濃くなったり表面が隆起してきたりします。治療は、主にフラッシュランプ・パルス色素レーザーが用いられます。
色素レーザーを照射すると、赤血球の赤色に反応して熱エネルギーが発生します。この熱によって、増殖した血管を破壊していくのです。
パルス色素レーザーは、特にポートワイン母斑に効果が高く、赤い色をかなり薄くすることが期待できます。ただし、長期間経過していたために厚くなってしまったポートワイン母斑の場合は、レーザー治療ではなく手術で切除することがあります。
硬化療法が第1選択になる静脈奇形
静脈奇形は、皮膚の下にできる血管の塊で、奇形静脈が集まって大きくなったものです。海綿状血管腫と呼ばれることもあり、出生時にすでに存在していることがほとんどです。触ると、ゴムできたボールのように軟らかいのが特徴です。
自然に小さくなったり消えたりすることはなく、そのままの大きさを保つか、徐々に大きくなっていくかします。皮膚の下にできた乳児血管腫(苺状血管腫)と似ているため、両者を判別することはすぐにはできません。
経過を観察して、自然に消失すれば乳児血管腫、消えなければ静脈奇形と判断します。身体の一部に限局的にできた場合は、外科手術によって切除することもあります。
しかし、あちこちにできるびらん性の場合や塊が巨大な場合は、全摘出することはとても困難です。そこで、びらん性や塊が巨大な場合は、硬化療法が用いられます。
硬化療法とは、硬化剤という薬剤を患部に注入し、奇形血管を詰まらせることによって治す方法です。治療は1回では終わらず、複数回必要になります。
完治が難しい動静脈奇形
動静脈奇形は、動脈が毛細血管を介さずに静脈に直接つながった血管の奇形です。時間とともに痛みや出血といった症状が進行し、時には心不全を引き起こして生命を脅かすこともあります。治療は静脈奇形以上に難しく、完治が困難なため、症状のコントロールが目的になります。
症状を抑える保存療法では、弾性ストッキングなどを用いて血管の拡張や血流量を抑える圧迫療法に効果が期待されています。動静脈奇形が小さく、場所も限られている場合は、切除手術が行われることもあります。
硬化療法が選ばれるリンパ管奇形
リンパ管奇形は、リンパ管の形成異常によって生じた腫瘍のことです。なかでも、首や腋、手足、頬粘膜に、数mm台の水疱が現れる限局性リンパ管奇形が最もよく見られる病気です。
治療は、皮膚に傷跡が残りにくく、効果も高いことから硬化療法が選ばれることが多くなります。特に限局性リンパ管奇形の場合は、数回の治療で完全消失が期待できるといわれています。患部が目立たない場所にできた場合は、手術によって切除されることもあります。
まとめ
種類によって治療が変わる血管腫
治療の必要がない乳児血管腫(苺状血管腫)
レーザー治療が行われる毛細血管奇形
硬化療法が第1選択になる静脈奇形
完治が難しい動静脈奇形
硬化療法が選ばれるリンパ管奇形