熱性けいれんは、子供の病気のなかで親が最も恐怖を覚える症状のひとつです。正しい知識を持っていないと、痙攣を起こしている子供の姿に冷静さを保てず、対処を間違えかねません。
熱性けいれんでは、どういった 痙攣 を起こすのか見ていきましょう。
熱性けいれんとはどのような痙攣なのか
熱性けいれんの代表的な症状とは
熱性けいれんは、発熱に伴って起きる痙攣のことで、いわゆる「ひきつけ」と呼ばれるものです。突然、手足を突っ張って、身体をのけぞるように硬くし、歯を食いしばり、眼は白目を剥いて、ガタガタと震え始めます。
そして、意識不明になり、呼吸も不規則になります。場合によっては、チアノーゼを起こすこともあります。
熱性けいれんの特徴は、左右対称の痙攣が現れることです。右手と左手、右足と左足が同じような格好になるのです。
もし左右でばらばらの痙攣が見られると、別の病気が疑われます。ほとんどの場合、痙攣は数分以内に治まり、その後は何事もなかったように意識を取り戻したり、そのまま眠ったりします。
熱性けいれんの病態とは
2015年3月、『熱性けいれん診療ガイドライン』が18年ぶりに改訂されました。新ガイドラインによると、熱性けいれんは「6~60カ月(5歳)に起こる、通常は38度以上の発熱に伴う発作性疾患」と定義されています。
発症する月齢に幅がありますが、1~2歳児が最も多く発症すると言われています。また、6カ月未満、5歳以上の子供にはほとんど見られないのも特徴のひとつです。
発熱については、多くの場合は39度以上の発熱が見られます。高熱が持続しているときに熱性けいれんを起こすこともありますが、むしろ体温が急激に上昇したときに起こりやすいようです。
熱性けいれんを発症するのは、乳幼児の8%程度だと言われています。また、再発するのは約30~40%であり、過半数は生涯に一度しか起こりません。
なぜ熱性けいれんが起こるのか
熱性けいれんがなぜ起こるのかは、はっきりしたことはわかっていません。乳幼児が多く発症するのは、乳幼児は脳の組織が発育途上のため、発熱によって脳が興奮するためではないかと考えられています。
また、発症した子供の家族を調べてみると、同じように熱性けいれんを発症したことのある人が多く、遺伝性の体質が関係しているのではないかと言われています。
きっかけとなる発熱の原因としては、扁桃炎や咽頭炎が最も多く、中耳炎や胃腸炎、突発性発疹や麻疹、予防接種後などにも見られることがあります。
2種類ある熱性けいれん
熱性けいれんには、単純型と複雑型の2種類があります。単純型は熱性けいれんの大多数を占めるもので、いわゆる「ひきつけ」そのものの症状を起こします。
痙攣が終わった後は、運動麻痺のような後遺症を残すこともなく、予後は良好です。
一方、複雑型は、発症する年齢が決まっておらず、痙攣の持続時間も長く、左右ばらばらの痙攣を起こします。痙攣が終わっても意識障害があり、24時間以内に反復することが多いという特徴もあります。
雑型は、熱性けいれんの数%に過ぎませんが、てんかんに移行しやすいと言われています。
発熱に伴う痙攣では髄膜炎の可能性も
発熱に伴って痙攣を起こした場合、熱性けいれんだけでなく、細菌性髄膜炎の可能性も考えられます。どちらも発症する年齢層と症状が似ているためです。
細菌性髄膜炎に特徴的なのは、髄膜刺激症状が現れることです。髄膜刺激症状とは、髄膜が刺激されているときに出る症状で、項部硬直やブルジンスキー徴候といったものがあります。
項部硬直は、仰向けに寝かせて頭を持ち上げようとすると、首に力が入っていて持ち上げにくい状態のことです。ブルジンスキー徴候は、同じように仰向けに寝かせた状態で頭を持ち上げると、同時に足も曲がってしまう状態のことを言います。
こうした髄膜刺激症状が見られたら、熱性けいれんではなく細菌性髄膜炎が疑われます。また、髄膜刺激症状が見られなくても、疑わしい場合は髄液検査を行って判別することもあります。さらに、痙攣後も意識障害が長時間続く場合は、脳炎や脳症を疑う必要もあります。
いずれにしても、発熱に伴う痙攣が見られた場合は落ち着いて対処し、痙攣が治まったら医療機関を受診するようにしてください。
まとめ
熱性けいれんとはどのような痙攣なのか
熱性けいれんの代表的な症状とは
熱性けいれんの病態とは
なぜ熱性けいれんが起こるのか
2種類ある熱性けいれん