「連続体」を意味する「スペクトラム」という言葉を用いた自閉症スペクトラムという概念は2013年にアメリカで発表された比較的新しいものです。発達障害が注目されることが多くなってきているものの、まだまだ耳慣れない方が多いのではないでしょうか。
自閉症スペクトラム の 診断 についてご紹介いたします。
自閉症スペクトラムの診断基準と具体的な診断方法とは
自閉症スペクトラムとは
自閉症スペクトラム障害はいくつかの自閉症状のある障害が統合されてできた診断名であると言えます。
自閉症スペクトラム障害の症状には多様性があって、重なり合っている連続体であるというのが2013年に「アメリカ精神疾患の診断・統計マニュアル」第5版で示され考え方です。
従来は自閉症、アスペルガー症候群などとそれぞれ症状に違いがあるとされ、診断基準も診断名も別々の障害として取り扱われてきました。
今後は自閉症、アスペルガー症候群、特定不能の発達障害と診断されてきたお子さんは自閉症スペクトラム障害・自閉スペクトラム症と診断されることが多くなると考えられています。
自閉症スペクトラム障害は「社会的コミュニケーションの困難」と「限定された反復的な興味や行動」が現れる障害で、知的障害が伴う場合も伴わない場合もあります。また、発現する症状は年齢や環境によって変化すると言われています。
コミュニケーションの障害があっても限定的な反復行動の問題がない場合は「社会的コミュニケーション症・社会的コミュニケーション障害」という診断名で分類されることになりました。
自閉症スペクトラムの診断基準とは
自閉症スペクトラムの概念が導入される前は自閉症やアスペルガー症候群は広汎性発達障害という診断カテゴリーに属していました。広汎性発達障害には「社会性の障害」・「コミュニケーションの障害」・「限定的な行動・興味・反復行動」の3領域がありましたが、自閉症スペクトラムの概念が導入されて以降は「社会性の障害」と「コミュニケーションの障害」は1つにまとめられることになりました。
したがって、自閉症スペクトラムの診断領域は「社会的コミュニケーション」と「限定的な行動・興味・反復行動」の2領域になっています。
また、自閉症スペクトラム障害では成人になってからの発症も診断基準として認められるようになりました。
「アメリカ精神疾患の診断・統計マニュアル」第5版による診断基準
「アメリカ精神疾患の診断・統計マニュアル」第5版によれば、自閉症スペクトラム障害と診断するためには「社会的コミュニケーション」の領域に分類される3項目全てを満たし、「限定的な行動・興味・反復行動」領域に分類される4項目の中の2項目を満たすことが必要だとされています。
「社会的コミュニケーション」の領域の3項目とは①相互の対人的・情緒的関係の欠落②対人的相互反応で非言語コミュニケーション行動を用いることの欠陥③人間関係を維持、発展させ、それを理解することの欠陥となっています。
「限定的な行動・興味・反復行動」の領域の4項目とは①常同的もしくは反復的な身体運動・物の使用・会話②同一性への固執・習慣へのこだわり③強度または異常なほどのきわめて限定的な興味④感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さとなっています。
自閉症スペクトラムの実際の診断
医療機関を受診すると臨床的な診断として行動観察と成育歴の聞き取りが行われます。行動観察では自由に遊ばせてそれを注意深く観察します。
成育歴の聞き取りでは社会性や対人コミュニケーション、幼稚園や保育園での様子、1歳半や3歳児検診の結果などを保護者から聞き取ることになります。いずれも発達の特性を見極め、知的障害の有無などをみることになります。
さらに専門的に診断を行う場合には乳幼児から成人まで対応することのできるADOSという検査を行うことがあります。検査用具や質問によって行動を観察するものです。
また、行動の系統や詳細な特徴をとらえるADI-Rという検査もあります。これは精神年齢が2歳以上であれば成人まで対応できるとされているものです。社会性、対人コミュニケーション、限定的な行動・興味・反復行動などに的を絞って検査をします。
PARS-TRは対人、コミュニケーション、こだわり、常同行動、困難性、過敏性など57項目で日常の行動を評価するものです。この検査は一人一人の障害の特性を見極めて、それぞれに適した支援を行うための検査です。
自閉症スペクトラム障害には知的障害や感覚過敏、てんかんなどの合併症を伴うことが多いとされていますので、知能検査、感覚プロファイル、脳波検査などの検査を行うこともあります。
さらに精神疾患との合併症がうかがわれる場合にはそれらの検査が加わることもあります。
まとめ
自閉症スペクトラムの診断基準と具体的な診断方法
自閉症スペクトラムとは
自閉症スペクトラムの診断基準とは
「アメリカ精神疾患の診断・統計マニュアル」第5版による診断基準
自閉スペクトラムの実際の診断