「小児の肥満化は増加傾向、生活習慣見直しで改善できる。(前編)」では、小児肥満の特徴や予防法、改善法についてご説明いたしました。後編では、小児の 肥満化 がどのような生活習慣病を引き起こすのかご紹介いたします。
また、小児肥満が原因となり筋肉や骨に過剰な負担がかかり運動機能が低下することもあります。
小児の肥満化は増加傾向、生活習慣見直しで改善できる。(後編)
小児肥満で成人病・生活習慣病になる
近年、小児の肥満でも成人病や生活習慣病を発症することが報告されています。ではどのような病気があり症状がでるのか紹介します。
糖尿病
糖尿病は血液中の糖分が多くなり過ぎ(血糖値上昇)腎臓で糖分を濾過しきれず「糖尿」として排泄される病気です。この状態はインスリンというホルモンが血液中の糖分を調整する十分な作用ができずに起こります。糖尿病にはⅠ型とⅡ型があり肥満と関係が深いのはⅡ型の糖尿です。
また肥満による糖尿病は遺伝との関係も深く考えられ家族、親族に糖尿病がいればより糖尿病を発症しやすいので注意が必要です。
Ⅰ型の糖尿病で症状が進行すれば腎臓病や失明など合併症が起こることがありますがⅡ型の糖尿病では進行がゆっくりで症状があらわれず年1の検査でも発見されることもあります。
Ⅱ型糖尿の治療は食事療法と運動療法で体重をコントロールするようになります。投薬やインスリン注射をする必要のない糖尿病です。
高脂血症
高脂血症は血液中に異常な量の脂肪が溜まる状態となる病気です。血液中の脂肪成分としては中性脂肪やコレステロールがあり、高カロリー、高脂肪の食生活、日常生活での運動量低下が原因となります。
コレステロールが増加すると動脈硬化、狭心症、心筋梗塞などを引き起こす可能性が高くなり、特に学童期や思春期で発症すると成長に伴い血管系疾患と進行します。高脂血症治療もⅡ型糖尿と同じ食事と運動療法になります。
生活習慣が改善するに伴い肥満症を解消できれば高脂血症も改善してきます。投薬治療をすることもありますが一般的には思春期以降で行う治療法となります。
動脈硬化
動脈硬化は動脈内にコレステロールが付着し血管の壁が破れやすく、また血管の内側が狭くなり血流が悪くなる病気です。動脈硬化は心臓血管で起こる狭心症や心筋梗塞、脳血管では脳梗塞を引き起こします。この状態は乳幼児期でも発症する可能性のある恐ろしい病気です。
原因としては加齢以外に肥満がありますが遺伝の可能性もあり、家族、親族に発症していれは要注意です。動脈硬化は1度発症すると元の状態に戻ることはないので注意してください。
高血圧
子供でも高血圧症状がみられることがあります。高血圧とは動脈硬化を引き起こす危険因子で注意が必要で、原因には遺伝と肥満が考えられています。高血圧の子供では両親のどちらかが高血圧または肥満であれば発症確率は非常に高くなります。
肥満になると血液量が増加し増えた血液を体内隅々に血液を届けるため心臓ポンプ作用も余分に必要となります。
その働きが高血圧を引き起こし心不全になることもあります。子供で高血圧なら成人後も高血圧の確率も上がり、特に学童期以降でも肥満で高血圧であれば確率は格段と高くなります。肥満が原因の高血圧は肥満解消されると血圧も正常に戻ります。
降圧剤などの投薬治療をする前に、まずは食事や運動による減量を中心に行います。
呼吸器系障害
極端な肥満では咽頭が脂肪で狭まり気道圧迫のため呼吸がしにくくなります。これが原因で睡眠時の大きないびきをかくこともあります。
脂肪が肺を圧迫し十分に膨らむことができず運動時に体内に十分な酸素を取り入れることが難しくなり運動どころか重たい身体を動かすだけでも重労働となり呼吸が追いつきません。
治療法はやはり減量です。重症な場合は痩せるまでの期間「呼吸補助装置」をつけることもあります。
骨、関節障害
肥満になると骨、関節、筋肉へ過剰に負担をかけることになります。主症状は腰痛(腰椎や腰の筋肉への負担が原因)、股関節痛(大腿骨頭に負担がかかることが原因)、変形性股関節症、大腿骨頭すべり症を発症します。また膝関節にも負担がかかり階段昇降や正座をした時に痛みを発症することもあります。
皮膚障害
極端な肥満では皮膚にも変化があらわれ、皮膚変化は外見に関わる症状なため学童期や思春期の子供には非常にストレスとなります。
二の腕や太ももの内部、腹、尻にひび割れ跡が起こる(皮膚委縮線条)や、うなじ、脇下、外陰部が黒ずんで堅くなる(黒色表皮症)があります。
まとめ
小児の肥満化は増加傾向、生活習慣見直しで改善できる(後編)
小児肥満で成人病、生活習慣病になる