夏になると幼稚園や保育園、小学校などで ヘルパンギーナ の流行がみられます。ヘルパンギーナには特効薬はなく、発熱、潰瘍などの症状が落ち着いたら、登園 可能となるところが多いようです。
しかし、回復期でも他の人へ感染させることがあり、登園再開については保護者間でトラブルになることもあります。
登園基準があいまいなヘルパンギーナ
ヘルパンギーナの流行
ヘルパンギーナは、エンテロウイルス属に属するウイルスが原因で発症します。
日本では、毎年5月から患者が発生しはじめ、7月には患者数のピークを迎えます。8月には減少しはじめ、10月ごろになると収束します。流行は、西から東にかけて移行していきます。
患者は9割が5歳以下の乳幼児ですが、大人も免疫力が低下していると感染します。
ヘルパンギーナの感染力
潜伏期や急性期では、他者への感染力が強く容易に流行していきます。回復期に入ってからも、3~4週間に渡ってウイルスを排泄してしまうため、感染の恐れがあります。
ヘルパンギーナの感染経路は、くしゃみなどによる飛沫感染、糞便などによる経口感染がメインとなります。手や指の清潔を保つことが難しい乳幼児の集団生活においては、感染者の唾液のついたおもちゃを舐める行為などで感染拡大していきます。
ヘルパンギーナを引き起こすウイルスはアルコールの耐性が強いため、消毒には時間がかかる点も感染を拡大させる要因となります。
文科省、厚生省のガイドライン
文部科学省(幼稚園、小学校を管轄)、厚生労働省(保育園を管轄)のガイドラインによると、ヘルパンギーナの登園基準については、熱が下がり、口の中の水泡や潰瘍の影響なく、普通の食事がとれることとしています。
熱が下がると多くの子供は元気になり、回復したように見えます。口の中の水泡や潰瘍が完全によくなるまでには1週間程度かかりますが、潰瘍があってもだんだん普通の食事がとれるようになっていきます。
学校保健法での取扱い
ヘルパンギーナは、学校保健法において、「校長先生の判断による出席停止の扱い」の分類には入っておらず、通常の欠席扱いとなります。
急性の症状が回復してからも、3~4週間に渡ってウイルスが排出され続けるため、急性期だけの出席停止にはあまり意味がありません。しかし、ウイルスが完全になくなる3~4週間を出席停止とするのは、現実的ではないというのが現在の見解です。
ただし、ヘルパンギーナの流行が拡大し、クラス全体の授業の進行の妨げになると判断される場合や、合併症などの発症で保護者の間に大きな不安が広がった場合などには、校長先生が学校医と相談することで「第3種学校伝染病」としての扱いをすることもあります。
登園再開基準について
仕事をしている保護者にとっては、いつから登園を再開するかということが大きな問題となります。ヘルパンギーナの急性期を過ぎたら、すぐにでも登園再開を希望する人も多いものです。
登園許可証や治癒証明書などが必要ないことから、熱が下がった段階で登園させてしまう保護者もいます。感染を拡大させないためには、かかりつけの小児科医が、ヘルパンギーナの経過を見て、登園を許可することは大前提です。
ですが、医師の許可があるからといって、そのまま登園させると保育園や幼稚園でトラブルになることがあるのも現実です。
自由保育の時間が長い保育園や幼稚園では、すべての園児の手や指を清潔に保ち続けるのはかなり困難です。こういった保育園や幼稚園に通園している子供は、登園再開について、より慎重になる必要があります。
小学生以上の子供については、トイレの後と給食の前の手洗いを徹底させることで、他の人への感染の機会はぐっと減ります。
ヘルパンギーナの急性期を過ぎ、医師の登園許可をもらったら、まずは幼稚園や保育園、小学校の担任の先生へ報告を行いましょう。事前に策を講じておくことで、保護者間のトラブルを回避できる場合もあります。
親や先生の指示を守れるか、病気への理解を示しているかなど、子供の能力には個人差があります。普段の様子を知る担任の先生と相談の上、登園再開時期を検討すると良いでしょう。
子供が元気であるかどうかも、回復度を測る重要な指針になります。熱が完全に下がっていても、著しく機嫌が悪い時、食欲が落ちている時は、まだ登園させるべきではありません。行事などがあっても、お休みするようにしましょう。
幼稚園や保育園、小学校では、どんな病気でも完全に感染を防ぐことはできません。保護者の都合で無理に登園させず、子供たちと保護者が安心して楽しい時間を過ごせるように、お互い配慮していくことが必要です。
まとめ
登園基準があいまいなヘルパンギーナ
ヘルパンギーナの流行
ヘルパンギーナの感染力
文科省、厚生省のガイドライン
学校保健法での取扱い
登園再開基準について