外遊びが大好きな子どもたちが、すり傷や切り傷のような小さな傷をつくってくることは日常茶飯事です。これくらいの傷ならすぐに治ると思い放っておくと、そこから細菌に感染してしまうことがあります。
そのような感染症の中でも特に危険なものが 破傷風 です。
すり傷から始まる恐ろしい病気、破傷風について
破傷風とは
破傷風とは、破傷風菌が、傷口から体内に入り増えることによっておこる感染症です。破傷風菌は、体内で破傷風毒素という強い毒素を大量に出し、筋肉をけいれんさせます。
感染した人の3分の1が死亡するという恐ろしい病気です。全身に毒がまわった場合は呼吸困難を発症し、80~90%という高い確率で窒息死に至ります。さらに毒素は脊髄の細胞から脳へと達することもあり、脳組織を壊してしまうこともあります。
破傷風菌は動物や人などの生物から感染することはありません。破傷風菌は土の中に生息していて、傷口が土にふれることによって感染します。破傷風菌は酸素に弱いため、浅い傷の場合は傷口を洗って消毒するといった普通の手当で十分に感染を防ぐことができます。
傷口が深い場合は、なるべく傷口を大きく開いて洗い、酸素に触れさせることが大切です。深い傷の奥で菌を無酸素の状態においておくと、菌が増殖し破傷風を発症してしまうことになります。
破傷風の症状
破傷風には潜伏期間があり、感染してすぐには症状があらわれません。潜伏期間は個人差が大きく3~21日程度といわれています。全身症状があらわれてからではほとんどの場合、手遅れです。
そのため、初期の症状を見逃さず、なるべく早期に治療を受けることが重要になります。症状はその程度によって、4つの時期に分類されます。
第1期
全身の倦怠感や肩こりを感じるようになります。顔がゆがんたようになり、舌がもつれるような感じがあります。
第2期
顔の筋肉がこわばり、時にはひきつった笑い顔のような状態になります。また、口が開きにくくなり、食べ物が噛みにくくなったり飲み込みにくくなったりします。寝汗や歯ぎしりといった症状がみられることもあります。ここでは適切に治療を受ければ、まだ完治できる段階です。
第3期
全身が固まったような筋肉のけいれんがおこります。腹部も背中もいっせいに筋肉が緊張するため、背中が反り返る(後弓反張)姿勢になることもあります。意識ははっきりしていて、全身に激しい痛みがおこるため、たいへんつらく苦しい状態です。
けいれんがあまりに強いと、筋肉をこわしてしまうことや背骨が折れてしまうこともあります。この段階は、命の危険が心配される時期です。
第4期
神経に作用していた毒素の力が弱まり、けいれんが改善していきます。少しずつ回復に向かう時期です。
破傷風の治療
抗毒素血清や抗生物質を投与して、破傷風菌の毒素を中和したり破傷風菌自体を減らしたりする治療をおこないます。そして、けいれんを押さえる抗けいれん剤を投与します。全身の管理として、呼吸や血圧を整える治療が行われます。
破傷風を予防するには
破傷風は致死率が高く治療も難しいため、予防にまさる治療はないといわれています。予防接種の効果が大変大きく、日本では、小児科の定期予防接種に指定されています。四種混合ワクチン、三種混合ワクチン、二種混合ワクチンのいずれにも破傷風ワクチンが含まれています。
破傷風ワクチンには、トキソイドという無毒化された破傷風毒が入っており、体内に毒に対する抗体をつくる効果があります。
予防接種の時期は、第1期として生後3~4か月から4週間間隔で3回受けます。予防効果を高めるために、3回受けることが推奨されています。ワクチンの効果は10年程度とされているため、小学6年生の時に第2期として追加接種を受けます。その効果は20歳頃まで続くと考えられます。
まとめ
すり傷から始まる恐ろしい病気、破傷風について
破傷風とは
破傷風の症状
破傷風の治療
破傷風を予防するには