かつて下痢( げり )は、子供の最大の死因でした。今なお発展途上国では、二大死因の一つであり、対策が求められています。下痢の恐ろしさは、長時間にわたって水分が失われるため、脱水症状に陥ってしまうことです。
脱水症状を起こさないためには、症状を見極めて対処することが大切です。
下痢(げり)のときに気を付けたいこと
子供の便の状態を知っておく
下痢は「便の水分量が増加した状態で排便の回数が増える病気」と定義されます。誰もが経験する、ごくありふれた病気です。子供は3歳になるまでに、1回から3回は下痢になると言われています。
下痢になりますと、便が水っぽくなるだけでなく、色やにおいといった便の状態が明らかに変化します。
例えば、母乳を飲んでいる乳児の場合、便は普段から軟らかいものですが、下痢になると完全に液状になります。子供が幼いうちは、日頃から子供の便の状態や排便パターンを知っておき、変化がないかを注意しておく必要があります。
下痢の主な原因は感染症
下痢の主な原因は、ウイルスや細菌による急性消化管感染症です。ただし、ウイルスと細菌では、下痢の症状の現れ方に違いが見られます。
通常、ウイルス感染の場合、液状の便が1日に何回も出る激しい下痢は、24時間程度で治まります。
一方、細菌が感染した場合は、激しい下痢が1日以上続くことがほとんどです。
もし、24時間を過ぎても下痢の状態が軽くならないときは、サルモネラ菌や黄色ブドウ球菌などによる食中毒が原因になっている可能性が考えられますので、早急に医療機関を受診するようにしてください。
症状が下痢だけでなく発熱もともなう場合、ほとんどは風邪が原因ですが、まれに違う病気が原因になっていることもあります。
例えば、中耳炎や尿路感染症にかかりますと、発熱をともなった持続的な下痢を発症することがあります。なぜ消化管とは別の臓器に細菌やウイルスが感染しているのに下痢を引き起こすのか、その理由ははっきりと分かっていません。
もし子供の下痢がなかなか治まらず、同時に発熱も見られる場合は、中耳炎や尿路感染症といったお腹以外の病気の可能性もありますので、注意してください。
他に目立った症状がなく、下痢だけが1週間以上続く場合は、食物不耐症の可能性があります。食物不耐症とは、ある特定の食物を消化することができないために、消化管に負荷がかかる病気のことです。
最も多く見られるのは、乳糖不耐性です。乳糖とは牛乳や乳製品に含まれている成分で、乳糖不耐症の子供はこの乳糖を分解する酵素を持っていません。
そのため、牛乳や乳製品を摂取しますと、消化することができず消化管に不調を来すのです。食物不耐症の症状は、子供のときだけでなく、成長して成人になってから発症することもあります。
下痢の怖さは脱水を招くこと
下痢を起こしたとき、注意しなければならないのが脱水です。実は、下痢を起こして、軽い脱水状態になることはそれほど珍しいことではありません。そんなとき、子供はいつもよりものどの渇きを訴えます。この程度の脱水であれば、それほど問題ではありません。
しかし、脱水が進み、中等度以上になると状況は深刻になります。中等度以上の脱水を起こしているかどうかを判断するためには、まず口の中を見てください。軽度の脱水であれば、口唇は乾いていても、舌は湿っていることがほとんどです。
しかし、中等度になると舌まで乾いてくるのです。また、脱水が進行しますと、尿が出なくなります。普段と比べて、排尿の回数があまりにも少なければ、脱水が進んでいると考えるべきです。
さらに、普段はそんなに泣かない子供が、泣き続けている場合も注意が必要です。特に、泣いているのに涙が出ていなければ、脱水に陥っている可能性が濃厚ですので、すぐに医療機関を受診してください。
母乳を飲んでいる乳児に見られる生理的下痢症
母乳を飲んでいる乳児は、ミルクを飲んでいる乳児に比べて軟便になる傾向があります。その理由は、乳児は乳糖を分解するラクターゼが不足しているからです。
ですので、母乳で育てている場合は、たとえ下痢の回数が多くても、その他の症状が見られず、体重増加も良好であれば、それほど心配はないでしょう。これを生理的下痢症と呼び、特に治療の必要はなく、経過観察とされることがほとんどです。
子供は、12歳児よりも5歳児、5歳児よりも1歳児というように、幼くなればなるほど、身体に蓄えられる水分量が少なくなります。
つまり、幼い子供のほうが脱水の危険性が高まるのです。下痢を起こした場合は、脱水の症状を見過ごさないように、普段と違うところがないか、子供の様子をしっかり観察するようにしてください。
まとめ
下痢(げり)のときに気を付けたいこと
子供の便の状態を知っておく
下痢の主な原因は感染症
下痢の怖さは脱水を招くこと
母乳を飲んでいる乳児に見られる生理的下痢症