急性虫垂炎は子どもが5歳を過ぎるころから多くなる病気です。重症化し、虫垂が破れると腹膜炎をおこしてしまいます。しかし、腹膜炎の中には癌性腹膜炎といい、臓器にできた癌を原因とするものもあります。
今回は、 癌性腹膜炎 についてお伝えします。
癌によってひきおこされる癌性腹膜炎
癌性腹膜炎とは
胃がんにかかると、まず、胃の内側に癌が発生します。それが進行し、胃の外側にまで癌が及ぶようになると、臓器を囲んでいる腹膜に癌が転移します。これが癌性腹膜炎とよばれるものです。胃のほかにも卵巣や肝臓、膵臓、大腸などにできた癌からも癌性腹膜炎は発生します。
癌性腹膜炎がみられると、その時点で癌は末期に入っているということになります。また、腹膜炎をおこすと癌の進行がはやまるため、ほかの場所にも癌細胞が転移している可能性も高く、治療が難しい状態といえます。
癌性腹膜炎の症状
発熱、悪寒、嘔吐などの症状があらわれます。また、特徴的な症状として腹水がたまります。そのため、腹痛や腹部の膨満感、呼吸困難といった症状があらわれます。
腹水が長期間たまっていると、腸の癒着がおこり腸閉塞や尿管閉塞をおこします。この状態になると、排便やおならができなくなり、尿の量も減少します。それにともなって、腹痛も激しくなっていきます。
また、この腹水には血液中のタンパク質が流れ出ているため、患者は栄養失調の状態になり体がどんどん衰弱していきます。
治療法1 一般的な治療
癌性腹膜炎がおきる状態では、癌が体中に広がっていることも多いため、免疫賦活薬や制癌剤を全身あるいは腹膜内に投与します。
しかし、末期癌である場合、これらの療法も一時的な処置でしかありません。そのため、副作用で苦しむより痛みを緩和し、精神的に支えるといった治療をおこなうことを選択する場合もあります。
治療法2 NK細胞による治療
NK細胞とはナチュラルキラー細胞のことです。NK細胞は癌細胞を攻撃する力にたけている免疫細胞です。健康な人の血液中にもともと存在する細胞で、日々発生する癌細胞はこのNK細胞によって退治されています。
しかし、癌細胞の勢力が強くなってくると、逆に癌細胞によって、NK細胞の力を弱められてしまい、癌が増殖を始めるのです。
この治療法では、NK細胞を取り出してその力を活性化させた上で、再び患者の体内に戻します。活性化されたNK細胞は、直接、癌細胞を攻撃するほかに、体内にいるほかのNK細胞を活性化させる働きがあります。
そのため、この治療をおこなうと、癌細胞に対抗する力を全体的に高めることができます。体中に癌が広まっている癌性腹膜炎にも効果があり、症状の緩和などが期待できます。
治療法3 持続温熱腹膜灌流療法
最近では、持続温熱腹膜灌流療法(CHPP)という化学療法を行う病院もあります。これは、手術によって、癌の病巣とリンパ節を取り除いた後、開腹した状態のまま行います。
シスプラチン、マイチマイシン、エトポシドという3種類の抗癌剤を加熱した生理食塩水に入れます。それを腹腔内で循環させます。さらに、腹腔内の温度を42度から43度に保つことで、抗癌剤の効き目を高めます。
抗癌剤を点滴で血管内に入れる方法では、血流にのって癌細胞に薬が届くまでにさまざまな障害があるため、薬の効果が薄れてしまします。
しかし、この方法では抗癌剤が癌細胞に直接ふれるために効き目を十分に生かすことができます。近年、有効な治療法として研究が進み、世界中でこの治療が行われるようになってきています。
しかし、この治療法が適応しない病状もあり患者への負担も大きいため、どの癌性腹膜炎に対しても行えるわけではありません。
まとめ
癌によってひきおこされる癌性腹膜炎
癌性腹膜炎とは
癌性腹膜炎の症状
治療法1 一般的な治療
治療法2 NK細胞による治療
治療法3 持続温熱腹膜灌流療法