小さな子供や赤ちゃんが急性虫垂炎を発症すると、進行が早く腹膜炎を起こしてしまうことが少なくありません。 腹膜炎 は重症化すると命にかかわる重篤な状態になりますが、早期に治療を行うと予後は良好となります。異常に気付いたら夜間でも緊急で受診するようにして重症化を防ぎましょう。
子供の腹膜炎は夜間でも緊急の受診が必要
腹膜炎とは
腹膜というのは、胃や肝臓などの臓器を覆っている半透明の膜のことです。通常、腹腔内は無菌の状態ですが、細菌感染や物理的刺激によって炎症を起こしている状態を腹膜炎と言います。急性腹膜炎と慢性腹膜炎に分けられます。
子供の場合、細菌感染が原因の急性腹膜炎が多く、早期に適切な治療を行わないと敗血症や多臓器不全などの重篤な症状を合併することがあります。
腹膜炎の原因
急性腹膜炎の原因は大きく二つに分けられます。ひとつは細菌の感染による腹膜の炎症で、もうひとつは物理的・化学的な刺激によるものです。
細菌感染が原因の場合、急性虫垂炎や急性胆嚢炎、急性膵炎などで腹腔内にある臓器が炎症を起こし、症状が進行して腹膜にまで炎症が広がることによって生じます。子供の場合、急性虫垂炎の頻度が高く、症状の進行も早いため腹膜炎を起こしやすいので注意が必要です。
一方、物理的・化学的な刺激が原因となる急性腹膜炎では、交通事故での外傷や消化管疾患などによる胃液、胆汁の腹腔内漏出などが要因として挙げられます。
赤ちゃんの急性腹膜炎は、生まれつき腸管に問題がある「胎便性腹膜炎」であることが多いです。これは赤ちゃんが生まれる前に、お母さんの胎内で腸管異常のために老廃物が適切に処理できず、腹腔内に漏れてしまい腹膜炎を起こすというものです。
出生時にお腹の異常なふくらみや嘔吐などの症状がみられます。胎便性腹膜炎は細菌などの関与はなく、胎便に含まれる消化液などが原因の化学的な刺激による腹膜炎です。
腹膜炎の症状
腹膜炎になると激しい腹痛を訴えます。はじめのうちはお腹の一部だけが痛いと感じますが、次第にお腹全体が激しく痛みます。発熱や吐き気、嘔吐、のどの渇きなども症状としてあらわれます。
小さな子供や赤ちゃんではお腹の痛みの程度などを正確に伝えることができないため、痛がっている様子を見て程度を判断するしかありません。頻脈があらわれることもあるので、合わせて確認するようにしましょう。
症状が進行していくと、腹水が溜まり、お腹が膨れてきます。重症になるとショック状態や死亡することもあるため、早急な処置が必要です。
腹膜炎の検査
腹膜炎が疑われる場合、ブルンベルグ徴候や筋性防御(きんせいぼうぎょ)、腸雑音、血液検査、画像検査などを総合的に判断して、確定診断をくだします。ブルンベルグ徴候というのは、お腹を押した手を急に離した時に痛みを感じるかどうかを調べることで、これは腹膜炎に特有の所見です。
筋性防御は、発症してから間もないうちは軽い触診で腹壁の緊張がわかりますが、症状が進んでいくと腹筋が固くなり板状硬(ばんじょうこう)という状態になり、腹膜の炎症を示唆する所見となります。
血液検査では、白血球が増えCRP値が高くなります。腹部のX線撮影、超音波検査、CT検査なども併せて行います。
腹膜炎の治療
基本的には腹膜炎の治療では、入院して外科的な手術を行います。腹膜炎の原因となっている臓器を切除したり、穿孔部分をふさいだり、腹腔内に漏れ出た膿の除去などが手術で行われます。病院にもよりますが、入院した当日か翌日には手術が行われることが多いようです。
腹膜炎を発症する原因となった病気の治療も必要となります。どの臓器が原因となっているのか、なんの細菌に感染しているのかなどよく調べた上で並行して治療を行います。
手術後も腸管の機能が回復するまで、安静、絶食などの食事管理、抗菌薬の投与などが引き続き行われます。入院期間は手術方式や患者の年齢、どの程度進行していたかなどによっても異なりますが、おおむね10日ほどから3週間程度となっています。
まとめ
子供の腹膜炎は夜間でも緊急の受診が必要
腹膜炎とは
腹膜炎の原因
腹膜炎の症状
腹膜炎の検査
腹膜炎の治療