腸重積 は生後3、4カ月~1歳までの乳児に多くみられる病気で、放置すると腸が壊死してしまう大変怖い病気です。腸重積に特徴的な症状や様子などを知って、該当すると思われる場合は夜間でも大至急病院に行くようにしましょう。
素早い適切な診断で腸重積の重症化を防ぐ
腸重積の症状
腸重積は、腸管の一部が腸管に入り込み重なり合ってしまう病気です。多くは小腸の終わりの部分である回腸が大腸側に入り込んでしまいます。生後3、4カ月~1歳前後の乳児に多く発症する病気で、男児の方が女児の2倍ほど多く発症するといわれています。
赤ちゃんはお腹が痛いと言葉で表すことができません。機嫌が悪くなったり、激しくぐずったりして腹痛を訴えます。腸重積の場合、激しい腹痛は5~15分ほどの間隔でおとずれるため、泣いていてもしばらくすると泣き止みます。
しかし、またしばらくして激しく泣き始め、嘔吐してしまうこともあります。徐々に赤ちゃんは痛みと疲労のためにぐったりとしていきます。腸管の損傷がひどくなってくると、意識障害が起きて呼びかけに反応しなくなっていきます。
腸重積では血便が出ることが知られていますが、病気の始まりの時点では血便が出ないこともあります。はじめは便の表面に血液が付着する程度の血便ですが、徐々にいちごジャムのような真っ赤な血便になっていきます。
腸重積の原因
腸重積の原因はまだはっきりとは分かっていませんが、乳幼児の場合は、腸に分布しているリンパ節が腫れて大腸に入り込んでいくと考えられています。
リンパ節が腫れる原因として挙げられるのが風邪などのウイルス感染ではないかとされています。腸重積にかかった赤ちゃんの4分の1ほどに風邪の症状がみられます。
また生まれつき小腸に小さな袋状のものができるメッケル憩室も発症の原因になると考えられています。まれにすい臓組織が小腸に迷い込んで腸重積の原因となる場合もあります。
腸重積の診断
腸重積の診断は、右側上腹部にソーセージのようなしこりを確認することや、超音波検査、レントゲン検査を用いて確定します。腸重積になると、腸の内容物の移動が阻害されて嘔吐といった腸閉塞の症状もあらわれます。
腸重積を起こした腸は次第に血液が行き届かなくなり、壊死を起こします。壊死してしまった腸は開腹手術で切り取ることになります。
腸重積は急速に悪化する病気です。最悪の場合、腸管が破れて腹膜炎を起こし命に関わることもあります。できるだけ早い診断と治療の開始が必要というわけです。
腸重積の治療
発症後24時間以内で比較的全身状態が良好な時は、造影剤や空気を肛門から注入して整復を試みます。発症から時間があまり経過していない場合は、これだけで腸を元の状態に戻すことができる場合もあります。
発症から24時間以上経過してしまっている場合は基本的には開腹手術を行います。腸に血液が行き届いておらず壊死してしまっている時は、腸を切り取らなければならないこともあります。腸重積を整復した後は、再発と食事管理のため入院して全身状態を確認します。
再発は、注腸造影での整復では1割程度となっています。開腹手術後の再発は3.5%以下となっていますが、中には何度も再発を繰り返す子供もいます。原因が分からず、再発を繰り返す子供でも1歳を過ぎると自然に治ることもあるので、経過観察で対応することもあります。
病院へ行くときの判断
腸重積は緊急に処置が必要な病気です。適切な診断を仰ぐためには、赤ちゃんの全身状態をよく観察して正しく医師に状態を伝えるようにしましょう。
便秘や一般的な風邪の症状と似ている部分も多いですが、腸重積に特徴的な間欠的啼泣(かんけつてきていきゅう)(泣いたり、泣き止んだりを繰り返すこと)が見られたら、夜中でも救急病院を受診した方が良いでしょう。
血便が出ていたり、赤ちゃんがぐったりとして顔色が悪くなっていたりする時は、迷わず救急車を呼んで病院に行きましょう。発症後24時間までの診断で、治療方針が大きく変わりますので、一刻の猶予もありません。
まとめ
素早い適切な診断で腸重積の重症化を防ぐ
腸重積の症状
腸重積の原因
腸重積の診断
腸重積の治療
病院へ行くときの判断