子供の便秘は決して珍しいことではなく、10人に1人以上のお子さんが便秘であるという統計があるほどです。便秘で腹部の膨満感があると食欲が低下することから、体重が増えないということは容易に推測できます。
中にはヒルシュスプルング病という耳慣れない病気が潜んでいることもあると言います。 便秘 と 体重 の関係についてご紹介いたします。
食欲不振だけが原因ではない便秘による体重増加不良
子供の体重について
子供の体重は発育状態を知るバロメーターとして着目されることが多いものです。とりわけ1歳までの乳児期には、3ヶ月で誕生時の体重の約2倍、1年で約3倍と急激な増加をしますので保護者にとっても気になるところでしょう。
検診の度に体重を測定し、母子手帳に記録していくのですが、発育曲線グラフの外側になってしまうと心配になってくる保護者の方もあるのではないでしょうか。
子供の体重の増え方が遅く、発育曲線で囲まれた帯の下側であったとしても、発育曲線に沿うように徐々に増えていっている場合は心配のないことが多いようです。
体重に限らず発育は十人十色です。食べる量もお子さんによって違っていて当然なのです。また、体重の増加のパターンも一定のものではありません。
体重の数字にばかり目をとられることなく、子供が元気で機嫌よくしているか、食欲はあるかなどの観点が大切になってきます。
ヒルシュスプルング病とは
慢性の便秘と体重の増加不良を伴う病気としてよく知られているのはヒルシュスプルング病です。これは慢性の便秘によって大腸が拡張してしまう病気です。
大腸や小腸の壁には神経節細胞というものがあって、その細胞の刺激によって腸管が伸び縮みして食べ物を消化・吸収して肛門まで運んでいます。
ヒルシュスプルング病のお子さんは先天的に神経節細胞が欠如しているために腸の蠕動運動が起こらず、慢性的な便秘になってしまいます。その結果、滞留した便が大腸を拡張してしまうのです。
最初の症状は生後すぐの胎便の排泄が遅れることです。排便や排ガスができないので腹部が膨満し、胆汁の色である濃い緑色の液を嘔吐したりすることもあります。症状が進むと栄養不良のため、体重増加不良となることが多いです。
腸管の神経節細胞が欠如した部分が非常に狭い場合には浣腸などでうまく制御することができることもありますが、ほとんどの場合は神経節細胞のない腸管を切除してつなぎ合わせる手術が必要となってきます。
昨今では腹腔鏡下手術や肛門からの手術を施すなど、体に負担のかからない治療法がとられるようになってきました。
頑固な便秘と体重増加不良が観られる場合には、稀とは言うもののこのような先天的な器質的問題がある場合があることを心に留めておいてください。
便秘による食欲低下などの注意点
便秘であることはわかっていても、深刻にとらえることがないままに重症化し、治療の必要になる便秘症やさらに重症化した慢性便秘症になってしまうことも多いものです。
お子さんの食欲不振や吐き気で受診してその原因が便秘で驚いてしまったという経験をされた保護者の方もあるかと思います。子供の便秘に気づくのは治療が必要になる便秘症になってからがほとんどだと言っても過言ではないほどです。
便秘かどうかは排便の回数だけでは判断できないものです。1回の排便の量・便の固さ・排便時の痛みや出血などを総合的に観察してみてください。
腹部の膨満感や吐き気があっては食欲がわかないのは当然です。食欲と体重も便秘症状がある場合には便秘と切り離さずに考えるようにするとよいでしょう。
子供の便秘は急速に進んでしまうと言います。また、進行した便秘症では固くなってしまった便と便の間から無意識に柔らかい便が漏れてしまう便失禁が起こったりします。
保育園や幼稚園、学校などで集団生活を送る子供にとって便失禁は不登校のきっかけになることもあると言います。たかが便秘とあなどらず、心配な症状があれば小児科医に相談してみることをお勧めします。
まとめ
食欲不振だけが原因ではない便秘による体重増加不良
子供の体重について
ヒルシュスプルング病とは
便秘による食欲低下などの注意点