「BCG予防接種は接種後の経過観察で結核菌感染の有無を確認(前編)」では、BCG予防接種とは何かをご説明いたしました。後編では、 BCG 予防接種 の 経過 や副反応についてご説明いたします。
BCG予防接種は接種後の経過観察で結核菌感染の有無を確認(後編)
日本における結核の実状とは?
BCGとは未だ多くの罹患者がいる結核を予防するためのワクチン接種です。国立感染症研究所への報告によると2015年度の結核発生届が提出されている件数は24,995件です。世界の中でもこの数字は決して低い数字とは言えません。
これはあくまでもきちんと病院を受診して、感染症法に基づいて医師から地域の保健所に対して届け出がされた件数にすぎません。
感染症法による届け出とは、流行、蔓延化する可能性が非常に高い結核や鳥インフルエンザ、デング熱などをはじめとした多くの疾患に対して診断をおこなった場合、その診断にあたった医師が規定日数以内に最寄りの保健所に報告する義務です。
日本の結核罹患率はアメリカの4.5倍、オーストラリアの4.2倍となっていて、結核中蔓延国となっています。
結核によって命を落とした過去最高の人数となった1918年度の140,197人から年を経過するごとに数は減少し、1950年以降は10万人以下、1970年代後半では1万人をきりました。
しかし2015年には1,955人と、近年に入ってからも多くの人々が結核によって命を落としていて油断できない疾患であることを十分認識することが重要です。
BCG予防接種による効果とは?
BCGワクチンの予防接種は結核の罹患リスクを低くする効果があるとはいえ、どの程度効果があるのでしょうか。
子供の結核の発症であれば5割から7割強程度、結核が重篤化した場合の結核化髄膜炎や全身性の結核においては6割から8割弱程度リスクを減らすることができるとの報告があがっています。
そして一度接種することで10年から15年程度効果が持続すると言われています。命を落とす危険性もある結核からわが子を守るためにBCGワクチンの予防接種の効果は高いと言えます。
しかしBCGワクチンだけに関わらず、予防接種後は経過の状態によっては重篤な副反応が出る場合もあるということは十分認識しておく必要があります。
BCGの副反応のリスクとは?
低年齢でのワクチンの予防接種は大病を予防することへの安心感を得る一方、副反応のリスクと常に天秤にかけて考えることとなります。親としても非常に過敏となって予防接種を避ける親たちも未だ少なくありません。
平成18年4月1日から平成19年3月31日までの1年間でBCGワクチンの予防接種を受けた人数は978,075人です。そのうち副反応症例数は106件となっていて、0歳児が86件(81.1%)で最も多く、次いで1歳児の12件(11.3%)となっています。
症状としては脇の下のリンパ節に2cm程度のしこりのようなものができる疾患である腋窩リンパ節腫大(えきかりんぱしゅだい)が49件(46.2%)で最も多く、ほとんどの場合治療の必要はなく、次第に自然縮小していきます。
おもに接種8日から2ヶ月以内に26件(53.1%)、3ヶ月以内までに計38件(77.6%)が集中して反応が出やすくなっていて、49件中42件が0歳児が占めています。
次いで皮膚結核様病変21件(19.8%)で、そのうち20件が0歳児となっています。低年齢ほど副反応が出ているということが報告されています。
近年発生する副反応の症状はほとんどが治療の必要がなく経過観察だけですむ状態となっています。予防接種後の副反応の怖さがあることは確かですが、命を落とす危険性のある疾患を予防できるという大きな効果を示すことも十分理解することも必要です。
まとめ
BCG予防接種は接種後の経過観察で結核菌感染の有無を確認(後編)
日本における結核の実状とは?
BCG予防接種による効果とは?
BCGの副反応のリスクとは?