アスペルガー症候群という言葉を耳にする機会が多くなってきたものの、正確にどのような障害なのか理解しているという方は少ないのではないでしょうか。 アスペルガー症候群 とその 診断テスト についてご紹介いたします。
アスペルガー症候群はどのような診断テストでわかるのですか
アスペルガー症候群の定義
大別すると、アスペルガー症候群には2つの定義が存在すると言います。
まず、イギリスのローナ・ウィングという児童精神科医が1981年に自閉症と診断されていないものの、社会性・コミュニケーション・想像力の3つの障害をもつ子供がいることに着目し、これらの子供の一部がアスペルガー症候群であるという定義づけをしました。
当時は自閉症という診断は言語によるコミュニケーションが限定されて、対人関心も非常に乏しい場合にのみ下されていました。
ウィングは言葉によるコミュニケーションが可能で一方的でも対人関心がある場合でも上述の3つの障害をもつ場合、その一部が1944年にハンス・アスペルガーというオーストリアの小児科医が報告したアスペルガー症候群という診断が適切であると考えたのです。
もう一つは、国際的な診断基準であるICD-10(世界保健機関による「国際疾病分類第10版)やDSM-Ⅳ(アメリカ精神医学会による「精神障害のための診断と統計のマニュアル」第4版)による定義です。
これらの定義によるとアスペルガー症候群は認知・言語発達の遅れがないこと、コミュニケーションの障害がないこと、社会性の障害とこだわりがあることとされています。
上述のように、ウィングの考え方に基づくと、アスペルガー症候群にはコミュニケーションの障害も併せもつことになります。
同じ子供が国際的な診断基準では自閉症で、ウィングの基準ではアスペルガー症候群と診断されるというようなことはこのような事情でありうることなのです。
アスペルガー症候群と自閉症
自閉症とアスペルガー症候群はひとつながりのもので、線引きのできるものではありません。幼児期に自閉症の特徴をもつ子供が思春期になってアスペルガー症候群の特徴が目立ってくるというようなことはよくあることです。
ウィングが提唱したのは、アスペルガー症候群と自閉症、そのどちらの特徴を持っている場合、上述の社会性・コミュニケーション・想像力の3つの障害があれば、自閉症スペクトラムと総称するという考え方です。
高機能自閉症、高機能広汎性発達障害などはアスペルガー症候群と同じ意味で使われることがあります。高機能自閉症とは知的障害がない自閉症のことです。
高機能自閉症とアスペルガー症候群が同じものなのかどうかということについては、研究者の間でも見解が分かれるようです。
広汎性発達障害という呼び方はICD-10やDSM-Ⅳで使用されているもので広義の自閉症のことです。自閉症スペクトラムは広汎性発達障害とほぼ同じ意味ですが、より広い範囲を包括する概念だと言うことができます。
アスペルガー症候群の診断テスト
アスペルガー症候群について何らかの心配があって医療機関を受診すると、アメリカ精神医学会のDSM-Ⅴ(「精神障害のための診断と統計のマニュアル」第5版)や世界保健機関のICD-10(「国際疾病分類」第10版)などによる診断基準によるテストを受けることになります。
DSM-Ⅴではアスペルガー症候群は自閉症スペクトラム障害と診断されることになりましたので、ICD-10に基づく診断テストをご紹介いたします。
まず、言語や認知能力の発達に臨床的に明らかな遅れがないことが確認されます。2歳までに単語を使用し、3歳までに二語文を使えていることが必要とされています。
適応行動や周囲に向ける好奇心は生後3年間は正常な知的発達に見合うレベルでなければならないが、運動の不器用さや異常な没頭に伴う突出した特殊技能は診断に必須ではないとされています。
次に自閉症と同様の診断基準で社会的相互関係の質的な異常について確認されます。
具体的には視線や表情、身振りなどを社会的相互関係を調節するために使えているか、他人の情動に対する反応が障害されていないか、友人関係を興味や情緒を分かち合いながら発展させられるかなどの観点です。
そして、極端に限定された興味、もしくは限定的・反復的・常同的な行動・関心・活動性のパターンの有無を確認されます。
最後に単純型分裂病・分裂病型障害・強迫性障害・強迫性人格障害・小児期の反抗性・脱抑制性愛着障害など他の障害でないことが確認されます。
まとめ
アスペルガー症候群はどのような診断テストでわかるのですか
アスペルガー症候群の定義
アスペルガー症候群と自閉症
アスペルガー症候群の診断テスト