アデノウイルスは呼吸器や耳鼻咽喉科領域、泌尿器科領域など多種多様な感染症を引き起こすことがよく知られているウイルスです。代表的な疾患として咽頭結膜炎や流行性角結膜炎はご存知の方も多いかもしれません。
今回は アデノウイルス が引き起こす 下痢 についてご紹介いたします。
アデノウイルスによる下痢を見分けて防ごう二次感染
アデノウイルスとは
アデノウイルスはA~Fの6群に分類されて、現在のところ51種類の血清型が確認されています。この血清型がそれぞれ違った性質をもっているために多種多様な症状の疾患を引き起こします。
咽頭結膜炎、流行性角結膜炎、呼吸器感染症、胃腸炎、出血性膀胱炎などアデノウイルスが引き起こす疾患の診療領域は多岐にわたっています。
以前はアデノウイルスの確定診断には唾液や鼻汁からウイルスを分離して抗原を検出する方法がとられていました。
現在では迅速診断キットが開発され、綿棒で喉や目から検体を採取して試薬によって判定することができるようになりました。アデノウイルスの血清型まではわかりませんが、15~20分で判定できますので早期診断が可能になったのです。
アデノウイルスによる下痢
子どもの感染性胃腸炎はウイルス性のものが多く、アデノウイルスをはじめとして、ロタウイルス・ノロウイルスなどがよく知られています。
ロタウイルスは2~3月、ノロウイルスは12月頃に流行のピークがあるのに対して、アデノウイルスによる感染性胃腸炎は通年でみられて季節性はありません。腸管アデノウイルスはA~Fの分類のF群に属し、40と41の血清型をもつことが知られています。
アデノウイルスの胃腸炎は3歳未満の乳幼児に多くみられ、とりわけ0歳児からよく検出されます。感染経路は糞口感染で、7日間の潜伏期間を経て10~14日間ウイルスを排出すると言われています。
平均で7日間ほどの長引く下痢症状は、激しい症状にはならないものの10~14日間にもわたる場合があります。約半数のお子さんには嘔吐の症状も出ますが、回数は少なく、2日間ほどで嘔吐の症状はなくなります。
3割程度の確率で発熱を伴います。発熱の頻度は低く、微熱であることが多いとされています。のどの痛みを訴えるお子さんがあるのもアデノウイルスによる胃腸炎の特徴と言えるでしょう。
下痢便は白色またはクリーム色を呈します。ロタウイルスによる胃腸炎の下痢便が白色を呈することは非常によく知られていますが、アデノウイルスによる感染性胃腸炎でも下痢便が白色を呈することがあることを覚えておくとよいでしょう。
アデノウイルスによる下痢の治療
残念ながらアデノウイルスが下痢の原因である場合、特効薬はありません。そのため、対症療法が行われることになり、下痢止めや吐き気止めなどが処方されることが多くなります。
ただし、下痢止めを使用しても治療期間が変わらないという報告もあることなどから、強い下痢止めは使わない方がいいという考え方もあります。脱水症状や食欲の低下が著しいときには点滴治療が行われることもあります。
細菌などの混合感染を防ぐ目的で抗生剤が使われることもありますが、基本的には安静を保ち、自然治癒を待つという方針がとられます。
アデノウイルスによる下痢の家庭看護の注意点
脱水症状に注意して、こまめに水分を摂らせるようにすることが何より大切です。
下痢のおむつはすぐに取り換えるようにして、お尻をシャワーなどで洗い流した後、しっかりと乾燥するようにしてください。下痢便はおむつかぶれを誘発してしまいます。
吐き気のある時は無理に食事を摂らせずに、吐き気が収まって食欲が出てきたら、お粥やうどんなど胃にやさしく、消化の良い物を摂らせるようにしましょう。
下痢便からは大量のウイルスが排出されますので、取り換えたおむつはビニール袋に入れてきっちりと口を閉じるようにしてください。また、おむつを取り替えた際には石鹸でしっかり手を洗い、うがいをするようにして家庭内の二次感染を防ぎましょう。
まとめ
アデノウイルスによる下痢を見分けて防ごう二次感染
アデノウイルスとは
アデノウイルスによる下痢
アデノウイルスによる下痢の治療
アデノウイルスによる下痢の家庭看護の注意点