肛門は食べたものが消化管を通って体外に出る最後の部分で、便を排泄するという私たち人間にとってなくてはならない重要な働きをしています。
先天的に肛門が正常な位置に形成されない 鎖肛 について、その症状や原因、治療法などをわかりやすくまとめます。
生まれつき肛門がうまく作られない鎖肛とは、いったいなに?
鎖肛とは
鎖肛とは正常な位置に肛門が開かず、直腸が盲端(先が塞がっている)になっている先天性奇形で直腸肛門奇形とも呼ばれます。
その原因は胎内での成長の過程が正常に進まなかった場合に起こるとされていますが、なぜ、その過程が正常に進まないのかはわかっておらず、遺伝性もありません。
出生10,000人に対し2.0~2.5人の確率でみられ、2:3と女児よりも男児に多いです。
胎児の成長過程について
直腸や肛門は妊娠初期(妊娠したことに気付くか気づかないかくらいの時期)は膀胱などの泌尿器系とつながっていますが、妊娠2か月半ごろまでにはそれぞれが分離し、成長していきます。
この時期は消化器系以外にも循環器系、呼吸器系などの臓器が形成されるため器官形成期と呼ばれます。
鎖肛の合併症
鎖肛は前述したように正常な位置に肛門が形成されない病気でそれは妊娠2か月頃に泌尿器系との分離がうまくいかないことが原因であると言われていますが、この時期にそのほかの臓器も形成されるため、鎖肛の子どもは循環器や呼吸器もうまく発達せず何らかの障害(奇形)を合併して生まれることがあり、その可能性は50%程度です。
泌尿器系の合併症が多いといわれています。
鎖肛とダウン症の関係
ダウン症の子どもは健常の子どもと比べて体に何らかの異常を持って生まれる可能性が高いと言われています。中でも、圧倒的に多いのが心臓疾患で、ダウン症の子どもの40~50%は心臓に何らかの異常を持って生まれてきます。
心臓疾患の次に多い合併症が消化器疾患でその割合は3~8%と言われています。その消化器疾患の中に鎖肛が含まれており、ダウン症に限らずすべての先天性の消化器奇形としてはもっとも多いといわれています。
病型分類
鎖肛は正常な肛門の位置と直腸が閉鎖している位置の関係で病型が分類されます。正常な肛門の位置に最も近い位置で直腸が閉鎖している低位型、正常な肛門の位置に最も遠い位置で直腸が閉鎖している高位型、その中間の位置で直腸が閉鎖している中間型に大きくわけられます。
検査・診断
鎖肛は出生直後に体温を測る際に直腸に体温計が入らなかったり、母乳を与えている時に腹部が張ってきたり、嘔吐したりすることで気付かれることが多いですが、次のような検査が行われます。
鎖肛の検査は、視診とレントゲン撮影検査を行い、その他必要に応じて尿検査や超音波検査なども行われる場合があるようです。
視診は本来、肛門があるべき位置に肛門があるのか、ない場合は外見上、(ほかの場所につながっている交通路のようなもの)があるかを確認します。
次にレントゲン撮影検査ですが、子どもを倒立位にして横側から骨盤部を撮影します。その画像で病型分類を行います。
これら以外に必要に応じて超音波検査や尿検査などが行われることもあります。
症状
症状は便が出ないことから、腹部膨満、嘔吐などの腸閉塞症状があらわれます。また、排泄器官や性器の構造的な違いから男児と女児で以下のような症状がみられることがあります。
男児の場合
尿に便やガスがが混じる。
女児の場合
膣から便が出たり、子宮や膣に尿が溜まって、お腹が腫れる。
治療方法
治療は正常な位置に肛門を形成する手術を行います。手術は前述した病型分類によって術式や術後の排便機能に違いがあります。
まとめ
生まれつき肛門がうまく作られない鎖肛とは、いったいなに?
鎖肛とは
胎児の成長過程について
鎖肛の合併症
鎖肛とダウン症の関係
病型分類
検査・診断
症状
治療方法